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February 28, 2013

王先生来研


夕刻同濟大学の王教授と郭さんが来研。昨年東南大学のシンポジウム、同濟大学でのレクチャーを企画してくれたお二人である。日本に来たついでに来研してくれた。卒業設計を見ていただいてコメントをもらった。あまりに的確なご意見に改めて最近の中国建築家の力を感じた。その後三人で夕食。聞いたら明日は中国の建築家、教授陣20人が東工大を訪れるとのこと。理科大は理科大で中国との関係をきちんと作りたいものである。

February 27, 2013

レンガローカリズム


S.E.ラスムッセン吉田哲郎訳『北欧の建築』SD選書を読む。あのドイツ表現主義の影響を受けたグルントヴィ記念教会がコペンハーゲンにあるとは知らなかった。それにしてもこの教会の形は不思議である。加えてこういう垂直性の高い形状がレンガを積んでできていると言うのも不自然な感じ。組積造文化なのだから当然といえば当然なのだが、、、、今度訪れるオーフス大学のスタジオではレンガを使って地元の料理を食べるレストランが大学院生の課題だそうだ。なぜレンガなのかと言うとレンガはその土地の土でできているから。昨年同様今年も異国でのローカリズムを痛感させられそうである。この徹底したローカリティ精神はこの教会の頃からあったのだろうか?

王羲之見たぞ しかし直筆はないのだ


上野公園に新しくできたガーデンカフェで昼食をとり国立博物館に向かう。王羲之展を見る。平日の昼間だと言うのに10分待ちである。書人気はすごい。
王羲之は中国晋の時代、4世紀の書家である。中国の書の神様みたいな人なのだろう。
それにしても王羲之展と言いながら王羲之の直筆は一点もない(見た限りでは)すべて弟子たちが書き写したものあるいは臨書したものなのである。
更に展示には王羲之の字を臨書した唐の時代の巨匠の作品があり、其の唐の時代の巨匠たちに習った宋の時代の書家の作品があり、彼らに習った元、明、清の書家の作品が並ぶのだが、字が時代とともにくねくねしてくる(ように見える)。配偶者に言わせるとどんどん駄目になってきているのらしい。昔ほどいいという通念が確立している芸術分野もそうないのでは?

February 25, 2013

来年度前期輪読本を考えた


やっと自分の読書リスト更新が終了。ああ時間がかかった。それを踏まえて来年度前期の輪読本を考える。主として社会学、哲学、ファッションを織り交ぜ4年生からM2まで飽きずに読め、加えてM1、M2がこれまで読んでない本を選ぶのは結構いろいろなリストをあっちゃこっちゃ見ながら決めなければならない。そしてたどりついたのがこれ。あれ建築の本があまり入ってない。建築の本は各自読んでください。

1 三浦展 高円寺 東京新女子街 洋泉社 2010
2 三浦展 郊外はこれからどうなるか 中公新書クラレ2011
3 赤川学 社会問題の社会学 弘文堂 2012
4 東浩紀 一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル 講談社 2011
5 佐藤信 60年代のリアル ミネルヴァ書房 2011
6 与那覇潤 中国化する日本 文藝春秋 2011
7 アマルティア・セン アイデンティティと暴力 勁草書房 2011
8 ジョアン・エントウィスル ファッションと身体 日本経済評論社 2005
10 西谷真理子編 相対性コム デ ギャルソン論 フィルムアート社 2012
11 藤原 徹平 他 ファッションは語り始めた フィルムアート社 2011
12 ジョナサン・クレーリー 観察者の系譜 以文社2005
14 藤森照信 藤森照信の茶室学 六耀社 2012

この中で僕が最も好きな本はジョナサン・クレーリー『観察者の系譜』。しばらく絶版だった書です。

February 24, 2013

厚みについて考え中


朝、半蔵門を目指して走る(自転車で)すると右前方に深い藍色のタイル張りのビルが見えた。お菓子の泉屋のビルである。半蔵門でUターンして近くに行って見たらこのタイル両端部が緩やかに面取りされている。厚いんだよな。この厚み感は単なる物質感を超えて奥行き感を作る。それが陰影を伴うので遠目で深みを出す。
8時に家を出て9時に現場。事務所検査の駄目直しをチェック。10時からオープンハウス。一番乗りは元商店建築編集部の新海さん。久しぶりありがとうございます。今日はひっきりなし。東工大、理科大、信大、多摩美、OFDA、雑誌の方々、他にもたくさん。久しぶりにお会いできた方はうれしかった。今日だけで150人くらい来てくださっただろうか?あまりに人がたくさんいて見る方も大変だったかも。とにかくありがとうございました。いろいろな方にご意見いただいたのだが、多くの方に「太い、厚い」と言われた。今時の細い、薄いとは大違いというもの。そうかもしれない。朝見たタイルへの共感とこのことは関係するのかしないのか???考え中。

February 23, 2013

伊勢丹のディーテール


朝伊勢丹まで走った(と言っても自転車で)普通の時間帯だと人が多くて建物をしげしげと眺めることなどできないが、この時間だと建物周りをぐるりと一周じっくりと見ることができる。繊細な壁面のレリーフ、細かなアイアンワークに目が留まる。よくこんな仕事したよなあと感心する。ふと足元を見ると何気ない石の曲面加工にも驚かされる。無垢の削りだしである。コーナーに石目地がないからなかなか分厚い石である。現代ならパチンコ屋さんやラブホテルには使われそうなものだが、商業施設にはまあないと言っていいのでは。
午前中研究室へ。昨日いただいたデンマークからのメールに返信。レクチャーの内容を考えないと。午後、社会人修士の面接試験。みなさすがにしっかりした受け答えである。その後なんやかんやの会議が連なり。夕刻から来年度のゼミ本を選ぶべく自分の本リストを見る。見てあわてる。1年以上更新されていない。だいぶサボってしまった。更新作業をずーっとしていたら9時をまわった。まだ去年の11月分までしかリスト化できない。あと3か月分はまた来週。

February 22, 2013

格差再生産の構造にため息


午前中教室会議@九段、午後入試の決定会議@神楽坂、そしてその後一部の兼担の先生を交えて卒業判定会議@九段。昨日同様会議漬けの一日で九段神楽を往復。慌ただしい一日である。夜研究室で読みかけの新書を読む(橘木俊詔、迫田さやか『夫婦格差社会―二極化する結婚のかたち』中公新書2013)。このタイトルは一見夫と妻の間の格差を問題にしているようだが、そうではなく夫婦と夫婦の間の格差のことである。
簡単に言うと夫が外で働き、妻が家庭を守りつつも、夫の稼ぎが悪ければ妻がパートでもしてそれを補てんしたのが一昔前の夫婦。その時代は一億総中流だったのだが、今は妻が働くことがもはや前提となっている。加えて、稼ぎのいい夫は稼ぎのいい妻と一緒になっていることが多い。逆はもっと真で稼ぎのいい妻は稼ぎのいい夫といっしょになっている確率がとても高い。ということは稼ぎの悪い夫(妻)は稼ぎの悪い妻(夫)と一緒になっていることが多いのである。
前者のカップルをパワーカップルと呼び、後者をウィークカップルと言うそうだ。これはアメリカなどでは更に顕著な傾向なようだ。僕の世代でも僕の周りには、医者と弁護士、日銀と財務省、教授と教授、なんていうのが散見される。ということはもっと若い世代はもっとこういうカップル多いのだろう。そしてその逆も多いということである。
ウィークカップルと言う言葉はそれにしてもなんだか不愉快な言葉である。金がない人間が楽しく暮らせる社会があっていいではないか。たまたまいい教育が受けられなかった偶然が運命を決定し、それが再生産されることでこういう現象が助長されているのは明らかなのである。
高級高等教育以外が豊かさにつながる社会を作らないと国は亡びるよな!!

神楽に一級の工房ができそうだ

朝平瀬さん来研。とある本を一緒に作ろうと言う企画会議第一回。二人とも遅刻してきてその時間がぴったりあった。午後一に神楽で主任会議。電動自転車で移動。最近気温の割には体感温度がすごく低い。会議終了して九段に戻り、何していたのだろう?ひたすらメール打ったり、電話したり、来年度のゼミスケジュールなど考えているうちに夕方、山名さんが来て神楽の製図室と準備室を見に行こうと言われ神楽へ移動。壁一面の本棚に、GAJAPAN,GADOCUMENT、建築知識、ディテール、エルクロなど、見事に一杯。山名研が彼らの蔵書をここへすべて移動してくれた。ここは製図室というより授業では使わず、学生が純粋に制作に没頭できる工房にする予定。なかなか一級の工房ではないか。ここにヒートカッターや工具も置きたいのだが、さてこれを管理するにはどうするか?放っておけば一年で半分になりそうである。とりあえず、框スライディングドアを本棚や棚につけることを考える。その後レーザーカッターのある部屋を覗き、そして九段に戻る。

February 21, 2013

理科大葛飾キャンパス竣工


理科大金町キャンパスの竣工式に出席。10時40分から見学会が行われ12時くらいから直会。日建設計らしい建物だなと思ったし、パースなんかで見たものよりはるかにいい。安副社長に会い、設計チーフの川島さんともご挨拶。川島さんらしい設計だと思う。完成度がとても高い。一方この場所にこのヴォリュームがちょっとでかいなあとも感じる。以前に後輩先生が撮った写真を見た時これは丸の内?と思ったが本物見てもそう感じた。容積率200%を超えるキャンパス計画はかなりの密度にならざるを得ない。200をつくる方法はほかにもあるのだろうが、中心軸をがっちりとるとどうしてもこんなヴォリューム配置になるのだろう。

February 20, 2013

ワークショップ報告会@荒木町


アルゼンチンワークショップの報告会を新宿歴史博物館で行いました。ワークショップの敷地が荒木町なので報告会も荒木町のそばで。夜は荒木町に移動して懇親会。アルゼンチンに行った理科大の学生だけではなく、信大、早稲田、芸大、電気大、いろいろな大学の学生、そして先生として行った塚本さん、ワークショップを本にして出版してくれた鹿島出版会の川島さん、土屋さん、デザイナーの渡辺さん、理科大OBの薩田さん、広谷さん、理工から岩岡さん、OFDAから木島さん、竹内君、そして地元の日本設計の大野さんありがとうございます。今後の荒木町を考える会の礎になればと思います。

February 19, 2013

記憶力低下


西荻の家の事務所検査をする。未済工事が多くて見られる所だけの検査となった。設備もまだ全部は動かない。結局もう一回見るのだから一週間遅くてもよかったな。セッティング間違った。
帰宅してメールの束に返信。最近メールを簡単なんものから処理しようとして、面倒くさいものは後回しにする。そしてそのまま放置することとなり、いつしか記憶の領域から抜け落ちて返信せずクレームが来ると言うことがある。人に聞いたら皆(私くらいの年齢の方は)そういうことがあると知って少しほっとしている。メモらなくても、スターマークつけなくても覚えていられると思っている自分が危ない。気を付けなければ。

February 18, 2013

建築はプログラム?


西荻の家の第一回めのオープンハウスを行った。坂本先生が「、、、、プログラムだよな、、、、」とおっしゃる?前後の文脈をあまり覚えていないのだが、、、「、、、、、αスペースも読んだよ、、、、フレームとしての建築も知っている、、、、、」はてプログラムとは何か?と聞くと。どうも建築の使われ方という意味のようである。つまり建築は人によって現象すると言いたげである。でも建築が人で現象するなら人がいないと建築は存在しないことになる。となれば建築家は建築を創っていないことになる。それでいいのか?と先生は言いたげである。
人で現象する建築がある一方で人なしで成立する建築もある。モダニズム建築はその最たるものである。人ありなしの両極で現在の建築は振幅し、その振れのどこに立つかでその建築家の志向が決まる。
これは卒業設計などでもよく表れている。強い形態と方法論で殻を作る者がいるかと思えば極力何も作らず人がその場所をどう使うか人任せな者もいる。

February 17, 2013

理科大一部工学部建築学科卒計講評会

昨日は午後から一部建築学科の卒業設計講評会。と言っても教員の審査は既に終わっているので今日はOB(築理会)の審査会。教員審査での上位15人が一人4分ずつ発表。それを5人の審査員が審査して5つに絞ってからさらに議論。僕が選ぶ5人とは結構違うなあと思って面白かった。5つの中には土地を彫ったり切ったりする案が二つ。路地をさらに複雑にする案。古くに雛壇造成された十条で擁壁を利用した住居群を作る案。建物のスケール操作をした戸建住居群の案。
最後に一等を争ったのは擁壁住居とスケール操作住居。どちらも都市の中での住居のあり方を模索しているが、擁壁住居は都市の中での住居の場所を考えていて、スケール操作住居は住居自体の生成過程を考えている。この両方の思考過程が凝縮すれば文句なく一等なのだが、、、、

○擁壁住居群

○スケール操作住居群

February 15, 2013

今日の落胆と喜び

落胆:午前中卒業設計の簡単なクリティクを宇野先生と行う。明日がオフィシャルな講評会なのだが選ばれた15名だけしか発表できない。それでは選ばれない人が少々可哀そうだということでアンオフィシャルな会をやろうと宇野先生が企画した。だが来た学生は6~7名。発表できない30名近くは一応計画系だからもう少し来るのかと思ったが来なかった。まあそんなもんかねえ?学生って分かってない。先生が何でもやってくれると思ったら大間違い。先生だって叩かなきゃ響かないのだよ。今日の落胆。

喜び1:午後博士論文の公聴会と最終審査会。学習院キャンパスの成立過程を追う論文。その当時の学校設計指針や実例をもとに学習院を相対化する実証的研究である。過去4回の審査会の中でかなり突っ込んだ議論をしつつそれに忠実に応答しながら2か月間で見違えるようにいい論文に仕上がった。最初はどうなることかと思ったが着実に成長した。審査員なんてアリバイみたいなものという場合もたまにあるのだが、今回は一生懸命審査員全員が時間を費やしたかいがあった。今日の喜び。

喜び2:夜来年から研究生になりたいという大連理工大学出身の学生と面接。ポートフォリオはもうひと頑張りという気はするものの、きちんとした受け答え、建築設計における目標、将来のヴィジョンが明快。更に、拙著『建築の規則』を読み、リーテム大倉工場のことも知っていた。これも今日の喜び。

February 14, 2013

北欧史


北欧の歴史を読んでみた(百瀬宏、熊野聰、村井誠人編『北欧史』山川出版社1998)10世紀ころは海賊の国だったけれど、20世紀に入ると二つの戦争でスカンジナビア3国は中立を守ろうと努力する。そして冷戦後もNATOに加盟しつつも自国内に他国の軍事施設は作らない方針を貫いた。日本にはそういう道はあり得なかったのだろうか?

荒木町で塚本さんとαスぺー スの話をします


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来週は新宿歴史博物館で先日出版した『塚本由晴+坂牛卓のエスキスチェック αスペース』の出版記念とその題材となったアルゼンチンで行ったワークショップの報告を兼ねたイベント開きます。日時は2月19日2時半から夜まで。場所は四ツ谷にある新宿歴史博物館ですhttp://www.regasu-shinjuku.or.jp/?p=372。今日はそのトークショーの予行演習を研究室で行いました。半分は学生がワークショップの報告。半分は僕と塚本さんでワークショップの敷地となった四ツ谷・荒木町の話やαスペースとは何ぞやという話をします。
昨晩ディビット・スチュワート先生と夕食を一緒にした後いい気分で帰宅途中、偶然塚本さんと四ツ谷で会ったので、一杯やりながら来週何をするか話をしました。飲み過ぎて何を話したかよく覚えていません。でもこのαスペースの意義をしゃべろうと思っています。今日雑誌のインタビューが会ったのでこのαスペースの話をしたら、「これは21世紀の建築の主軸となりますね」と言われたので少し自信を持ちました。是非皆様おいでください。トークショーの後は荒木町のディープな場所で懇親会を行います。楽しみにしてください。


●荒木町にはこんな料亭の名残があります

February 12, 2013

たんきり地蔵


たんきり地蔵というけったいなお地蔵さんが家の近くあった。ぜんそくの人に効くらしい。僕の周りにはその傾向の人が結構いるので行ってみたら?江戸時代からの歴史ある地蔵らしいよ。

February 11, 2013

都市のエキスを地方に


大学で社会人選抜試験を終えて帰宅。エドワード・グレイザー山形浩生訳『都市は人類最高の発明である』NTT出版2012を読む。都市の素晴らしさがこれでもかというほど並べられている。彼にとって都市とは高密度、高コミュニケーション、高学歴。それによって、文化、社会、政治様々な分野においてイノベーションが起こり続ける場所のことである。
このイノベーションが経済を持続させ、文化を豊かにし、カーボンエミッションも減ずるというわけである。全く正しい。都市のアップサイドを見ればその通りである。では都市のダウンサイドを彼はどう考えるか。都市の貧困、その他を地方に追い出したらもっと悪化するし、都市の喧騒がいやで田舎に住むのであれば、そのエネルギー浪費を自ら自覚せよと言う。
例えば中国インドの人々が郊外化して車をアメリカ人並みに乗り回し、アメリカ人並みのカーボンエミッションを生み出せば世界の二酸化炭素排出量は4割増すという。だから今後二国の発展には著者の定義する都市化が必要だという。
都市が様々なアップサイドを持っているのは改めて著者に言われるまでもない。むしろ必要なことはどうやって地方を「都市化」するかではなかろうか?これはこの本を読む前からそう思っていることである。簡単に言えば地方のの高密度化、高コミュニケーション化、高インテリジェント化である。それをその場所なりのやり方でやることが肝要である。それが地方の明暗を分けると僕は思っている。

February 10, 2013

主人公がインフルエンザ!!



午後から翻訳勉強会。セメント1トン作るのに900キログラム以上の酸素排出をするのは避けられないとのこと。世界で一番セメントを作っているのは中国。しかしその中国よりアメリカの方が一人当たりの炭素排出量は多い。うーん。
夜高校の同窓生と夕食。韓国から同窓生の一人が出張で帰国する予定で連休の間に会食をセットしたのだが、主人公がインフルエンザで出張延期。あれあれ。

February 9, 2013

瞬間を狙うのかあるがままを受け取るのか


●ギャラリー小柳hpより
1月に入って初めて土曜休み。うれしい。久しぶりにジムでヨガやって銀座に行く。高田典夫さんが教えてくれた、アンリ カルティエ ブレッソンの「こころの眼」展をシャネルギャラリ―で見た。感想はコラムをどうぞhttp://ofda.jp/column/。「決定的瞬間」を誤解していたことを知ったのが大きな収穫。その足でギャラリー小柳にて開催されている鈴木理策の「アトリエのセザンヌ」を見る。鈴木がセザンヌのアトリエをあるがままにとらえた写真群。セザンヌが外界をあるがままにとらえたことに刺激されたそうだ。
ブレッソンは外界のリズムをとらえながら瞬間を待ってシャッターを押す。かたや眼前の状態をあるがままに受け取る。この差はかなり大きい。偶然近所に置かれた二人の写真家の作品に外界のとらえ方のコントラストを見た。

February 8, 2013

暗い空間の上に現れる白い家


今朝はひどく寒かった。風が強くて体感温度は0度くらい。9時ころ家を出て現場へ向かう。10時から完了検査の予定。ところが現場に着いたら担当者が「終わりました」と言う。検査官が9時半に来たらしく、20分くらいで終わってしまったそうだ。検査は最近担当に任せているのだが、ここは担当が初めてということで応援に来たのだが不要だった。「おいおいちゃんと見たのかよ?」と思いつつも、こんなものさっさと終わるに越したことはないわけでさっぱりした。これで立派に法律を守った建物となった。
内部は塗装もほぼ終わる。暗い空間の上に白い家形をした吹き抜けが現れる。家の中にもう一つの家が現れたように見える。。未決事項を手早く決めて12時に現場を後にする。来週は施行会社の自主検査をして、再来週は事務所検査。その週末オープンハウス。
午後大学で会議、打ち合わせ。来年のTAの数を数えていたら頭が痛くなった。こういう作業大嫌い。9時に大学ロックアウト。明後日は社会人特別選抜である。

February 7, 2013

理科大理工の修士設計講評会


午後、理科大理工学部の修士設計の講評会に行ってきた。理科大は僕のいる工学部建築学科と理工学部建築学科がある。理工学部は千葉県の野田市の大きなキャンパスにある。広いせいか制作スペースもゆったりあり模型も工学部に比べるとやや大きい気がする。
今年は常勤の先生たちに加え、宮本佳明さん、池田昌弘さん、メジロスタジオの古澤さん、末光弘和さん僕がゲストで呼ばれた。なかなか豪華な顔ぶれ。発表者は14人いて最初に全員プレゼンした後、講評者で投票して票の少ない順に議論し、最後再投票して最優秀、優秀を決めた。そのプロセスはさながらコンペの公開審査である。作品の内容は工学部も理工もいい勝負だけれど、工学部が5人しか修士設計をやる人間がいないのに比べると選手層が厚いかんじであるし、何と言っても学生と対話しながらの最終選考まで進む進め方ははるかに理工学部のシステムは素晴らしい。見習いたいところである。最優秀案は新たな構造原理による場の創出を模索したもの。修士設計はこれから設計していく自分の考えの核を創る場である。これが彼の背骨となって今後素晴らしい設計者として生きていくことを期待したい。

February 6, 2013

松岡聡さんたちによる狂気の配置図集に驚嘆


松岡聡さんから本を頂いた。『サイト―建築の配置図集』学芸出版社2013。いただいてしばらく目を通す暇がなかったのっだが、今日じっくりと眺めてみた。80近い建物の配置図が描かれているのだが、配置図と言ってもその範囲がとてつもなく広い。一般に我々が配置図と呼ぶ図面の範囲を遥かに超えている。このとんでもない一種の狂気ともいえる着眼点と作業量に先ずは驚かされた。
上の図は一体どの建物の配置図か分かるだろうか?というより対象建物がどこにあるのか分かるだろうか?じっくり見ていくとやっと分かる。サボワ邸である。それはおそらく、あのU型の一階平面が描かれているからである。建物と周囲の関係だけでサボワ邸を認識できる人は少なくともここを訪れたことのある人だけであろう。
僕自身サボワに行って最初に驚いたのはその建ち方だった。もちろんサボワ邸をその単体の特徴(たとえば5原則の具現化)として捉えることは間違いではないけれど、この建物が宇宙船のように空から舞い降りてきて野原に着陸した(ように見える)ということもサボワの最重要項目の一つだと僕は思っている。
かくのごとく建物とは建ち方である。そしてそれは敷地内での位置であることは固より、もっと広い範囲での風景の一コマなのである。
この図がどのような方法で描かれたのかは分からないが(google earthをトレースしたのだろうか)周辺の建物の屋根の形状、密度、植栽の形、密度が刻銘に描かれていて二次元でありながら3次元を想像させるに足る情報量を持っている。恥ずかしながら行ったことのない建物だらけなのだが、写真などでは伝わらない建物の現れがこの図の中には建ちあがる。この図が持つ情報を頭の中で組み立てることは若い建築学徒にとって必須のトレーニングではなかろうか。

February 5, 2013

無自覚ないいものに気づくこと


●地の家の隣に第二地の家

桑沢デザインの大松さんに呼ばれ、2年生のスタジオの講評をした。課題は大松さんが7年間くらい続けているもので篠原一男の住宅を一つ与え、その隣地に同じエッセンを受け継いだ住宅を計画せよというもの。ゲストは篠原研のOBがずぅーっと呼ばれてきているとのこと。白澤さん、坂本さん、武田さん、高橋さん、安田さん、というわけで、順番で僕のようだ。しかしよく考えると依然奥山さんと二人で呼ばれ対談した気もする。あれとこれは同じスタジオなのだろうか?古い話でもう分からん。
最初に20くらいある作品から8個選んで発表してもらうのだが、この8選ぶのが難しい。さすが桑沢だと思わせられた。はずれという作品が少ない。これは工学部の建築学科では考えられないこと。やっと選んだ8つを講評しながら思ったのは、これも桑沢ならでは、なのだが、コンセプトで主張していることよりもっといいことが見つかること。もちろん「言っていること」と「やっていること」が「合う」ということがとても重要なのだが、往々にしてこれははずれる。そして往々にして言っていること以上のものは見受けられない。しかるにここでは言っていることよりいいことが見え隠れする。それに自覚的になれればしめたものである。それを自覚して自分の技にすれば少しずつ決め技が増えるはずである。

February 4, 2013

幕末の不思議


今日から大学も入試試験が始まる。裏門から職員証を見せて入校。大学の中はもちろんとても静か。雑用を片付け副査になっている修士論文を引き続き読む。とても全部一辺には読み切れない。
夜は読みかけの文庫本半藤一利『それからの海舟』筑摩書房2008を読む。著者も言うようにこの人がいなかったら江戸末期は内戦がおこっていてもおかしくなかったと思う。そんなことになっていたら一体日本はどんな国になっていたのだろうか?歴史は不思議なものである。

February 3, 2013

坂本一成の小ささによる親しみ


午前中代田の町家を見学に行った。売りに出されており、買主が見つかる前に最後のお披露目ということのようだ。以前一度見せていただいたことがありその時の印象が鮮烈で2度見る必要はないかなと思ったのだが、やはり名残惜しくまた行った。
印象は変わらない。最初の印象通りである。それは一言で言えばスケールである。坂本先生のこのころの建物の垂直方向の高さのとり方は曰く言い難い。簡単に言えば低く感じるように作られているのである。先ずファサードが低い。いや実際にはそんなには低くないのかもしれないが低く感じられる。そして内部に入るとやはり低い。いやこれも全体的にべったり低いわけでもないので低く感じられると言った方がいいのかもしれない。高いところもあるのだから。それは天井だけではない。椅子とか手すりとかキャビネットとかが低いのである。
一般論で言えば和室は床に座るのでその関係性で周囲が少し低めに抑えられる。一方椅子に座る部屋なら周囲は少し高くてもおかしくない。だから椅子の場所が高くて畳は低いというのが一般論でありこの家でもそれはそうである。しかし世の中一般のそれとは少し違う。例えば広間は二層吹き抜けである。木造住宅のごく普通の階高を考えれば5メートルくらいあってもいいのだがそんなに無い。おそらく4メートルちょっとというところだろう(間違っていたら恥ずかしいけれど)。そしてそこにある作り付けのソファが低い。SH300無いしソファー上に頭を押さえつけるように庇が出ている。2階の和室は片流れで低い方は1800くらい高い方は2500くらいはあるかな?洋室は天井が切妻型で結構高いが普通800くらいある窓台が椅子の高さである。二階の廊下は片流れで低い方は頭がぶつかりそうである。そして手すり兼収納は500くらい。
かくのごとくどこも少しずつ低く感じられる。決してとんでもなく低いわけではない。だから逆にボディブローのようにじわーっと効いてくる。
四方田犬彦が『かわいい論』の中でかわいいの本質の一つに小さいことを挙げていた。つまり世の中に出回っている寸法より少し小さいものには何か子犬を見るような可愛らしさを感じるということである。そしてかわいらしさは親近感に通ずる。坂本建築をいろいろ見てきたがこの親しみがいいのだなああと思うに至った。

2週間で400万

日工大で博士論文の審査して理科大に戻って博士論文の審査。頭がぐるぐる回る。研究室に戻るとコンペの一等賞の話あり。300万とのこと。素晴らしい。先週も一等賞で100万。金を有効に使いなさい。

February 1, 2013

理科大修士論文、設計発表会


論文発表会最後の波の修士論文と、設計発表会朝九時からみなさんご苦労様。昼休み後は少々眠いけれど、意匠、構造、環境、やはり修士になると、説明時間が長くなるのと、説明も上手になるのとで異分野もわかりやすい。神楽坂で論文発表やって、九段に移り設計の発表。設計が5人しかいないのは少々残念。内容もピンキリ。先ずはご苦労様。これで自分の大学は全部終わった。来週は他大で二つ。