松岡聡さんたちによる狂気の配置図集に驚嘆
松岡聡さんから本を頂いた。『サイト―建築の配置図集』学芸出版社2013。いただいてしばらく目を通す暇がなかったのっだが、今日じっくりと眺めてみた。80近い建物の配置図が描かれているのだが、配置図と言ってもその範囲がとてつもなく広い。一般に我々が配置図と呼ぶ図面の範囲を遥かに超えている。このとんでもない一種の狂気ともいえる着眼点と作業量に先ずは驚かされた。
上の図は一体どの建物の配置図か分かるだろうか?というより対象建物がどこにあるのか分かるだろうか?じっくり見ていくとやっと分かる。サボワ邸である。それはおそらく、あのU型の一階平面が描かれているからである。建物と周囲の関係だけでサボワ邸を認識できる人は少なくともここを訪れたことのある人だけであろう。
僕自身サボワに行って最初に驚いたのはその建ち方だった。もちろんサボワ邸をその単体の特徴(たとえば5原則の具現化)として捉えることは間違いではないけれど、この建物が宇宙船のように空から舞い降りてきて野原に着陸した(ように見える)ということもサボワの最重要項目の一つだと僕は思っている。
かくのごとく建物とは建ち方である。そしてそれは敷地内での位置であることは固より、もっと広い範囲での風景の一コマなのである。
この図がどのような方法で描かれたのかは分からないが(google earthをトレースしたのだろうか)周辺の建物の屋根の形状、密度、植栽の形、密度が刻銘に描かれていて二次元でありながら3次元を想像させるに足る情報量を持っている。恥ずかしながら行ったことのない建物だらけなのだが、写真などでは伝わらない建物の現れがこの図の中には建ちあがる。この図が持つ情報を頭の中で組み立てることは若い建築学徒にとって必須のトレーニングではなかろうか。