|
Q4 コンクリート防水というのはぼくらが設計事務所に勤めている頃は教えてもらいませんでした。つまり知りませんでした。更に多分知っていても事務所の技術水準からして、使えなかったのではないでしょうか。しかし、多くの実績が在るだけではなく公の仕様書にも記されていますね。
A4 福島県の例を見ると、昭和53年度版の福島県建築工事工事仕様書では屋根の防水の一項目にコンクリート防水が示され、その工事業者としてタケイ工業が一社指定されています。当時は未だ独禁法が厳しくなかった時代であり、技術のある会社はこうした指定を受けられたのでしょう。50年代後半から、この一社指定は無くなったものの今でも福島の建築工事仕様書にはコンクリート防水が屋根防水の一形式として指定されています。ただし、タケイの一社指定ではなくなったからなのかどうか定かではありませんが、勾配については、一社指定の時には、百分の一でよかったものが、現在は三十分の一という仕様になっています。
また、建築学会の工事標準仕様書、JASS8(防水工事)にもコンクリート防水は昭和36年から謳われています。これが、昭和61年からJASS5(コンクリート工事)に移ったのは単に、分類の問題であり、コンクリート防水の性能が低いということではなかったと思います。
Q5 その後、現在に至るまでのニーズの変化はどのようになっていますか。
A5 70年代にコンクリートのニーズの増加とポンプ車の普及により、コンクリートの質が低下したというのはよく言われているところですが、この波に飲まれないように、代理店方式をやめ責任施工に切り替えたところでタケイの工事量は減少しました。また、学校教育、ひいては事務所での新入生教育の中に、コンクリート防水は登場しません。その昔登場していたかどうか知る由もありませんが、こうした中で、工事現場においてもアスファルト防水に大きく水を開けられ、現場も使わなくなり、その実体を把握するものが急激に減少したものと思われます。
しかし、タケイの責任施工が量は少量でも地道に実績を上げ、打放しを追求する建築家のデザイン的要求(笠木が不要である)や都心の厳しい法制限の中でパラペット寸法が十分取れないとか、ある規模以上(200平方メートル)でのアス防に比較したコスト減を求めたゼネコンからのVE案として引き合いがあります。また、最近の面白い受注としては、火力発電所の200メートルの連続煙突の屋上防水としてメンテフリーという評価から、採用されています。
Q6 コンクリート防水とは実は二つの意味があります。ひとつは屋根面の防水で、これはいわゆる建物内への水浸入を防ぐということ。もうひとつは壁面等でコンクリートの中性化を防止する意味での防水です。この意味でタケイのコンクリート防水が、コンクリートの中性化の防止にも役立つのではないでしょうか。
A6 既に述べたようにタケイコンクリートの原理は簡潔に言えば、打設後のコンクリート中に残る未水和セメントの膜を化学的に破り未水和セメントを減らしコンクリート中の空隙を減少させることでコンクリートを密実にして防水性能を高めることにあります。よって、コンクリートの中性化もある程度軽減できます。実際、二酸化炭素中での促進試験を見ると、タケイコンクリートの中性化はプレーンなものに比べて6ヶ月で約半分という結果が出ております。
話をいろいろ聞いて、実際の現場も見せてもらい、自分でも使ってみた。率直に言ってかなり信頼できるなという感じがある。これが大幅に使われない原因は、やはりコンクリートをきちんと打つということの難しさに起因するのだろうという気がした。ぼくは別にコンクリート防水の信奉者でもなければアスファルト防水や塗膜防水を卑下するものでもない。どの防水も使ったことはある、それぞれに利点も欠点もあると思っている。もちろん研究者ではないからその材料の詳細に立ち入り、すべての防水材料の分析をしてきたわけではない。ただ、最初に記したとおり、建築を材料の体系化されたものと見る時に素材を多機能化、少量化しながら体系を平明化できる方向に進めるのであれば、それに越したことはないと思っているだけのことである。更に言うと、コンクリートという困ったものがもう少し困ったものでなく皆でもう少し「きちんとコンクリートを打つ」ということを実践していくことが時代の要請ではないかと思っている。それは建築のコンクリートだけではなく、問題視されている、土木のコンクリートも根は同じである。そして「きちんとしたコンクリート」が打てるようになれば、また防水の方法にも新たな展開が生まれるのだろうと感じた。
|