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素材に求められる機能について
コンクリートが防水材になるということはどういうことか? 先ずコンクリート屋根というものは一般的には構造材としての屋根スラブがあり、その上に何がしかの防水材が載せられる。それがコンクリートだけで防水機能をもつということはひとつがふたつの役目を果たすのだから、材料が「多機能化」したと言える。更に、一般的には防水材はその上に保護材を載せたり、また防水材の端部をカバーするために笠木をつける。しかしコンクリートに防水能力があればそれらの煩雑なデイテールは不要となる。つまり構成が「平明化」される。また既述のとおり保護材(一般的には押さえコンクリート)が不要になるのだから材料が「少量化」できる。さてコンクリートが防水性能を持つことで、こうした三つの変化が看取されるのだが、この三つの傾向は実は今まさに材料に求められていることなのである。
「多機能化」については、工業製品の部品構成について「オブジェクトを構成するパーツの数は減りつつある」と述べるエツィオ・マンツィーニや、90年代前半を「融合材料」の創始期と位置づけている柳田博明等の主張が示す通り、かなり一般的な材料の未来像と言える。また部材の多機能化は半ば自動的に構成の「平明化」を呼び寄せるし、リサイクル的視点からも望まれるところである。さらに広い意味での環境問題が材料の「少量化」を招来することも用意に了解できるのではなかろうか。
防水コンクリート
さて、こうした時代の要請にどうも防水コンクリートは合致する。しかし、世の中に出回るディテール集というものの中にある鉄筋コンクリート造の陸屋根のパラペットの納まりは、アスファルト防水、あるいはシート防水を立ち上げて金属笠木で押さえるという構成であり、それ以外の納まりはあまり見たことがない。設計事務所に入所したてはそんな図を矩形図に一生懸命書くものであり、下手をすると、そういう納まりしか無いと思っている若い人はかなり多い。
しかしあまり普及してはいないが、コンクリートで防水する工法は世の中に存在している。もちろん林氏が指摘するとおり、きちんと打つことが前提であるから、きちんと打てる人が丁寧に(ということはそんなに沢山手がけることは出来ない)作る場合に限られる。だからフールプルーフの立場をとるゼネコンや大手設計事務所では使われない。多分2〜3年前までは、ゼネコンの設計部では使用禁止、大手設計事務所では今でもその標準詳細図にはもちろん、標準仕様書にも載っていないというのが現状であろう。この理由は多分最初に記したとおり、このコンクリートはきちんと打たなければその性能を発揮できないということによるのであろう。つまり、大手ゼネコンも大手設計事務所もコンクリートをきちんと打つことに半ば諦観しているということである。小さな建物ならまだしもヘクタール規模の建物を作る人間にとって、その隅々までに監理の目を行き届かせることは、はっきり言えば不可能なのである。そうした現場を持つ人間にとって、きちんとしたコンクリートを打つということはやはり諦観せざるを得ないというのも分からないではない。しかし、沢山の材料を複雑に絡ませて、ある機能を得るという考え方は、やめる方策があるのならばそちらに進むべき時代になってきているのではないだろうか、その意味でこの防水コンクリートについて少し考えてみることに意義はあると思う。
そこで防水コンクリートにおいて多くの実績と長い歴史を持つタケイ工業(株)に話を聞いてみようと思う。
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