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この考え方が定まり、まず排気口周辺に負圧を発生させる仕組みを考えた。その末東京湾では南北方向に卓越風が存在することに注目し南北軸に2枚の円弧状の羽を立て、その2枚の羽の間にこの卓越風を通すことで負圧を発生させることとし、その羽面に排気口を設けることで負圧による排気の誘因効果を期待することにした。
円弧の曲率、高さ、2枚の羽の間隔を決定するために風洞実験を行い、そこで得た貴重なデータをもとに2枚の羽のデザイン案を検討した。
この段階で人工島本体の中に納められる予定の機械室を換気塔内に設置する方向でプログラムが変更となり2枚の羽は機械室を納めるべく、2本の塔とし蓋をすることとした。蓋は水平でも問題はなかったが、別に設置されているレーダー委員会の調査で、上向きに斜めはレーダー障害を減少させるのに効果があるとの話も聞き、各々塔内に必要なミニマルなスペースを残し円筒を斜めに切断することとした。ここにおいて機能的な2本の塔の輪郭ができあがった。
最後にこの2本の塔を12°傾けた。傾けたことは、前述した機能的であることとはなんら関係がない。あるとすれば、この構築物の機能を成り立たせている、風を暗示するという意味においてである。
基本設計案が固まったところで後述するようにさらに緻密な風洞実験、コンピュータシュミレーションを行いショートカット排除、排気による壁面汚染の排除などを模索し最適な排気口の位置、形状を決定しながら、実施設計を1995年に完了させた。
初出:『建築技術』1998年3月号 |