建築のポートレート
リクシル出版の隈さんが打ち合わせの時に最近出された香山先生の本を持ってきてくれた。この本を持ってきてくれたのには理由があって、単に隈さんが担当した本だからということではない。この香山さんの本はまさに建築家の総合的な知性が詰まった本なのだという。そして嬉しいことに私が書いている本もその意味で単なる知識の倉庫というようなものではなく建築家の総合知が見られるものなので、その意味で香山先生の本と私のこれから出す本は似たものだと感ずるというのである。それは身にあまる光栄というものだが確かに建築家の創造作業が総合知の結実したものだというのは良くも悪しくも、あるいは意識的無意識的を問わずその通りだと思う。
香山先生の本は長島さんが選んだ香山先生撮影のスライドを香山先生が解説するというスタイルをとっているのだがこの文章がいい。ニューヨークの写真の文章ではこの街を作ったのは誰か問い、風が街を作ったのだと答えている。風の作る街ニューヨークというのはなんとも直線道路をすり抜ける海風を思い起こす体が奮い立つような文章である。