新刊に向けて
未だ出たわけではないけれど、昨日は私の出版担当のリクシルの隈さんが僕の原稿に対する意見を滔々と語ってくれた。隈さんは美術出版で編集されていた方なので、美術と建築の違いを語ってくれた。
「美術は美術家の考えていることが比較的ストレートに出るものだが、建築は様々な知の融合、混合がやっと形となって現れるのであり、当たり前だが坂牛さんが書いているような建築の条件に全ての建築家は絡め取られているはずなのだろう。そうした社会知のリゾームは実は学生にとっては単に建築を学ぶということだけではなく、建築以外の知を得る、つまり読む、本の読み方を教える本でもあると思う。こういう本はきっとずっと何度も何度も読みたくなる本出し、読んで勉強して欲しい本なのです」
なんという賛辞だろう。きっとダウンサイドもありでもそのことはおっしゃらなかったのだろう。でも僕が意図していることを素直に全て認めてくれたことに驚くとともに感激した。
これもきっとここまでこの本を鍛えてくれた飯尾さんの本に対する情熱があったからなのだと思う。この本は2014年に構想されたのだがよく調べてみると3回書き直し最後の書き直しがこれから始まる。最初の原稿を読みながら飯尾さんは「単なる売れる本を作るのは簡単です。そうではなくて、残る本を作りましょう」と言っていた。なので厳しく、赤をいれてくれるのである。その赤には大きく2種類あって、一つはいわゆる赤である。もう一つはもっと大きな読む人のターゲットであり、あるいは文章のあり方、客観的であるべき部分と主観的に語る部分の比率とか。あるいは章立てをもう1章増やそうなど。実際この本は書き始めは7章だったのが、現在9章あるのである。
飯尾さんの本への倫理観は実は学兄小田部氏からも聞いたことがあるし、同輩の稲葉からも聞いたことがある、本は出せばいいというものではないのだろう。装丁は須山悠理さんがしてくれるとのこと。多少理屈っぽく見えるだろう本のイメージを少し開いたものにするデザインをお願いしてくれたとのこと。写真が使われるのか、タイポグラフィだけで行くのかわからないが楽しみである。発売は5月半ばである。