坂本一成のスケール感
坂本先生の散田の家を拝見させていただいた。この家は坂本一成26歳(1969)、強く意識された白の家ができてから3年後の作品である。白の家同様の正方形平面。中央の柱。平面の2分割という特徴があるように見えるが、実は正方形からはみ出る大きな出窓(のような部分)。空中梁で途切れる柱。2分割と見えるが実は入れ子。など規準とした白の家から微妙な逸脱をしたのが坂本一成による篠原一男への反逆の始まりだったわけである。それにしても篠原のスケール感を換骨奪胎させた坂本一成の空間は決して日常的なそれでもない。散田にしても水瀬にしてもぐっと低く抑えられた天井、手摺、家具がある一方すっと抜けた吹き抜けの高さが高低の強いコントラストを生み出している。そして増築によって生まれた中庭の程よいスケールは水瀬の増築によってうまれた中庭と同様秀逸である。坂本一成のスケール操作に改めて感服した。