必読書『抽象と感情移入』
大学院講義の今日のテーマはフォルム。フォルムを近代的な視点で用いたのはフォルマリズム批評である。その批評家の重要な一人はヴェルフリン。しかしヴェルフリンのフォルマリズムでは様式の変遷を説明しきれない。そこに登場するのが芸術意欲なる概念で説明づけたリーグル。形式的、抽象的な様式史ではすくいきれない精神史に注目することでヴェルフリンを補完した。そしてその二つを合体したのがヴォリンゲルである。彼は様々な芸術衝動の基本を感情移入作用と、抽象作用の二つの方向性にあるとすることで、様式と精神の双方を説明する原理とした。
『抽象と感情移入』岩波文庫で絶版のようだが大学院生ならぜひどこかで見つけて読んでほしい本である。