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丹下さん曰く畳が亭主関白を生む

日本短波放送というラジオ局(現ラジオNIKKEI)で一九六〇年から放送された「建築夜話」という番組があった。日刊建設通信社と建設放送社が企画製作したものである。毎回対談形式で何回行われたかは知らないが以下の内容が二〇一〇年に『復刻 建築夜話―日本近代建築の記憶』として日建建設通信新聞社から出版された。少し前に出版した新聞社の津川さんから頂いた。なかなか目を通す時間が無かったが読み始めると実に面白い。
・日本建築の美しさ アントニン・レーモンド 丹下健三
・地震と建築 内藤多仲 竹山謙三郎
・建築の新しさと古さ 佐藤武夫 田中孝
・二十世紀の建築 丹下健三 有吉佐和子
・芸術家の進む道 前川國男 曾野綾子
・明暗と孤独を好む建築家 村野藤吾 幸田文 武基雄
・新興数寄屋建築のあれこれ 吉田五十八 戸塚文子
・彫刻と建築 松田軍平 平田重雄 朝倉響子
・楓河岸の頃 中村伝治 鷲巣昌
・建築と人生 竹腰建造 大江宏
・建築談話 渡辺節 田中孝
・風景と建築 吉村順三 戸塚文子
・建築家の夢と現実 圓堂政嘉 伊藤ていじ
・建築戯評 前川國男 近藤日出造
・下町かたぎの建築家 山口文象 海老原一郎 田中孝
・建築家として生きる 松田軍平 田中孝
・建築風俗誌 藤島亥治郎 佐藤武夫 村松貞次郎
先ずは丹下さんを読んでみる。対談日は昭和三六年、二月八日、一五日、二二日である。ピースセンターを作り、東京計画が正式発表される少し前、もちろんまだ代々木の体育館ができる前である。アメリカ、ヨーロッパを旅行して戻った有吉佐和子が近代主義に対してやや批判的に丹下さんに質問する。それに対して丹下さんがやんわりと近代主義への熱い思いを語るという展開である。伝統論者有吉に載せられて話が地域主義に入りこむと、伝統を近代に活かしてきた丹下ではあるが、もっと大きな問題を解決していかなければならないと言って東京計画を熱く語り始める。これには有吉も圧倒されて「なるほど面白いですね」と静かな感想で終っている。
一方で話しが住宅になり、有吉が寝室は畳にベッドがいいと言うと、丹下さんが自分の家はそうなっていると言い、有吉はややびっくり。そして丹下が畳は一度座ると起き上がるのが億劫になり、つい「おい!」と言って人にものを頼みたくなるもので座式が亭主関白に拍車をかけるのだと真面目に言っているのも愉快である。
鈴木博之が一級の歴史的証言と言っているが確かにそう思う。残りを読むのも楽しみ。

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