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80年代の建築を見る視座

ロザリンド・H・ウィリアムズ(Williams, H. R吉田紀子+田村真理訳『夢の消費革命―パリ万博と大衆消費の興隆』(1982 )1996を読む。原題はMass Consumption in Late Nineteenth-Century Franceなので大衆消費というよりは大量消費と言う気もするが、果たして十九世紀後半フランス(パリ)における華やかな消費がどの程度大衆のものであったのかはこの本だけではよく分からない。早稲田で建築の消費性という講義をする時はやはりボンマルシェ(19世紀半ば)を話題にはするものの大衆が生まれたのは20世紀初頭のアメリカだと話をしている。
パリのデパートが初めて定価と言う概念を作りだし、それによって人々は買わなくても適当に商品を見て回る楽しさを覚えた。そしてパリの万博が初めて商品に値札をつけて売りはじめた。消費というものが生活の付加価値を伴う文化的行動に繋がる契機だった。
この本では最初の僅かな部分だが、ルネサンスからルイ王朝への連続の中に消費文化の始まりを見ている。17~18世紀のバブル消費である。建築的にはそれと似たようなことが1980年代に起こった。だいたいこのバブル現象はいつでもいいものと思われない。ふまじめなものとして捨て去られることが多い。しかしバロックも200年以上たってやっとヴェルフリンに客観的評価を与えられた。80年代バブル・ポストモダンもじゅっぱひとからげに×をつけるのではなく、正確な分類と評価をすべきだと思っている。そのためにも消費の構造を歴史的にきちんと位置付けないといけないだろう。

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