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堤清二の魅力

辻井喬『叙情と闘争――辻井喬*堤清二回顧録』中公文庫2012を読む。次々に飛び出す政財界人、文士との交流は別世界の話しである。その中で少々びっくりしたが身近に感じた話があった。社会党の高沢寅男との逸話。ある日東大同窓の高沢が会いたいと堤に連絡をよこした。既に西武の経営者である堤に社会党の人間が会いたいと言うのも妙な話。当時高沢は社会党の中央執行部におり未だ議員では無かったが選挙に出ると言う。それが既に社会党の議員がいる選挙区から立つため、周到な根回しが必要であったのに情報が漏れその議員は憤った。その人は神近市子。元新聞記者であり愛人大杉栄が別の女性に心移りしたことから彼を刺傷し刑務所に入った強者である。
高沢は堤に仲裁に入って欲しいと懇願した。というのも堤の母が神近と親交があったから。堤という人はお人よしである。こう言う時にさっさと動いてくれる。堤は神近に電話でアポを入れ、高沢と2人で訪問したそうだ。きついことを言われたものの仲裁は上手くいった。加えて高沢は堤に西武の労組を紹介して欲しいと頼んだ。堤は高沢を労組の部屋へ連れて行き彼を応援するように頼んだそうだ。
堤は別れ際にこう言った「僕は君を応援するが条件がある。いつまでも社会党の幹部としての立場を貫いてくれ」と。
僕は学生になったころ高沢寅男に会ったことがある。社会主義を追いかける親父の同士であったから。社会党左派のばりばりのマルキストである。
やはり堤清二という人は一筋縄ではいかない人である。そこが彼の魅力でもある。

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