今村創平さんによるヴィドラーの訳本出版されました
今村創平さんからアンソニー・ヴィドラ―今村創平訳『20世紀建築の発明』2012鹿島出版会が送られてきた。だいぶ前に『言葉と建築』を訳し終わって次の勉強会の本を物色中にこの本も候補にあがり、少々皆でさわりくらいを訳した記憶がある。カウフマン、ロウ、バンハム、タフーリというモダニズムをけん引した建築史家のパワーダイナミクスを詳らかにする本である(と思っているが本当のところは実は知らない)。
とても興味深い本でもあり恩師ディビッド・スチュワートにこの本を訳そうかと思っているというと、それは止めた方がいいと言われ驚いた。なんとなれば彼の英語は日本語にするのがとても難しいからだと言う。僕の英語力をもってすれば英語で読むほうがはるかに楽なはずだと言うのである
もちろんそんなリップサービスを真には受けなかったのだが、訳すのが難しいと言うのは過去のヴィドラ―の訳本を読むと察するに余りある。というわけで僕らはこの本を諦めて『人間主義の建築』にとりかかったのである。しかし正確に言うとこの本に多少恋心をもってブログに書いたら、今村君にこれは既に自分が手をつけているよとメールいただいたので諦めもついたのである。
そしてあれから何年経ったか忘れたが、彼はついにこの難解な書の翻訳を終えたのである。しかも単独で。僕らが数名のグループで富士山を登っている間に彼は単独でエベレストに登頂したのである。これに敬意を払わずして何に敬意を払おう。とても頭が下がる思いである。そして心から祝福したい。
この気持ちをメールでお伝えすると彼は僕が翻訳を続けていることに勇気づけられたと言う。しかしそれは逆もまた真なりである。こんな難解な本を一人で訳そうなんて思う人がいることに元気をもらえる。そしてまた僕らも次の本にとりかかる勇気が湧いてくる。