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篠原一男に九間はない

僕は茶室らしきものを一つだけ設計したことがある。それから配偶者が茶をやるので茶会で茶をのむこともある。とは言えぞっこん茶に興味があるわけではない。長野にいたから藤森さんの高過庵も学生にくっついていけば見られただろうが行ったことはない。まあ茶に対しての興味などその程度である。
なのだが藤森照信『茶室学』六曜社2012は書店で見つけてすぐ買った。藤森ワールドは僕の経験では創ったものより文章の方が面白い。なぜならば彼の建築は彼の歴史的知性の上に構築されているからである。彼の歴史的知性はやはり図抜けて楽しい。その楽しさが建築に変換されているのだから建築もいいのだが変換される前はもっといいというのが僕の考えである。
それを読んでいると茶の起源として寝殿造りの神殿の北側に親しい仲間が集まって遊ぶ会所という場所ができ、そこで利き酒ならぬ利き茶のようなことが行われたそうだ。その会所は三間×三間の九坪の広さで九間(ここのま)と呼ばれたそうだ。ここで茶の話から飛ぶが、この三間四方というのは吉村順三お気に入りの大きさだそうで、彼は古今東西の気持ちいい部屋の大きさを調べたら三間四方が多かったそうだ。
さてそう聞くと恩師のプランを見てみたくなる。きっと違うだろうなあという予測のものとに。案の定、そんな大きさの部屋は殆どない。倍の50㎡くらいか、もっと小さいかである。篠原一男は古今東西の気持ち良ささそうな部屋を集めてそうならないように慎重に設計したのかもしれない。

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