金正男(ジョンナン)擁立はあるか?
五味洋冶『父・金正日と私』文藝春秋2012を読む。金正日(ジョンイル)は3人の妻に4人の子供を宿した。最初の妻との子が長男、金正男(ジョンナン)、次の妻との子が長女、金雪松、そして3人目の妻との子が次男、金正哲そして三男、金正恩(ジョンウン)である。正日を継いだのは三男正恩であり日本のディズニーランドに来たところを不法入国で捕まり強制送還されたのが長男正男である。
著者がこの長男と太いパイプを作り数百のメールと数時間の独占インタビューをマカオと北京で行ってこの本にまとめた。なかなかのスクープである。
長男が後継ぎとならなかったのはスイスで教育を受けた彼の中にかなりの自由思想が芽生えてしまったからなのかもしれない。しかしわが子をそんな可能性のある資本主義国で教育させた正日と言う人は一体何を考えていたのだろうか?これだけのスクープの中でもそれは明らかにならない。正男は父正日のことと、自らの仕事のことは決して語らない。
正男は北京に住み中国の強力なバックアップを受けている。もし正恩がガヴァナンスを発揮できずそれによって北朝鮮がうまく機能しなくなった場合どうなるだろうか?中国は西側諸国との橋頭保として北朝鮮を守らざるを得ないと言われている。その時正男が送り込まれるのではないかというのが著者の読みである。そうなるとアジアのパワーダイナミクスはかなり変わる。