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ゼロ年代のデザイン作法


松原慈さんから著書を頂いた。『ゼロ年代11人のデザイン作法』六曜社2012。真っ黄色な表紙が目に痛いほど。思わず表紙をとって読み始めた。
松原さんはその昔東大で講義した時の最も印象的な学生さんだった。僕の記憶が正しければ高校時代に見たルイスバラガンの写真集が余りに美しくて涙して建築を始めた。大学に入って建築をくまなく見るために東京フォーラムに夜中潜入して一晩過ごした。最終レポートでは読み切れないほどの文章で(内容は忘れたけれど)先生を困らせた。毎回レーポートに対し、70人くらいの筆の立つ文学部の学生に混じり、全然負けない印象的なレポートで僕を楽しませてくれた。
卒業後10年くらいたってとある講評会の場でお互いゲストクリティークで呼ばれてバッタリ再会。「先生!」と呼ばれ、にわかに誰かは思い出せなかった。ゲスト席にいるからなおさらである。最近何しているのですかという質問に「建築はあまりしていません」と言うので「へえー」と思ったのを覚えている。
そしてこの本を頂いた。彼女を含め11人のゼロ年代の若いデザイナーたちが言うことをまとめることなどできないが、彼女の言説はとても真面目に空間について述べている。そしてその空間思考の結果が必ずしも建築である必要はないことが感じられる。いやむしろそれは建築では無い方がいいのかもしれない。
この本の企画者である飯島直樹氏がこの11人を選んだ理由はカテゴライズに困るヒトタチと述べている。「建築あまりしてません」という彼女の言葉は選定基準に合致する。そして彼ら彼女らは建築の仕事が無いから建築をしていませんということではなく、真剣に創作を考えていると重要なのは建築と建築からはみ出る何かと建築と関係ない何かが繋がることなのだと言いたげだ。
先日ザケンチクへの意気込みの重要性を語った舌の根も乾かぬうちにこういうのも少し憚られるが、建築の思考は建築からは生まれないとも思う。だから彼ら彼女らの考えていることはよーーーく分かる。でも大学4年生まではあまりここにのめり込まない方がいいとも思うが、、、、

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