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建築計画2.0

東浩紀『一般意志2.0―ルソー、フロイト、グーグル』集英社2011を半分読んだ。半分しか読んでいないのでこれから書くことは彼が結論としているだろうことの予測である。あるいは彼の最初半分をもらって僕が勝手に作った結論でもいい。
2世紀前にジャンジャック・ルソーは考えた。人々の個々の意志(特殊意志)は集合するとある合意(一般意志)を形成しそれが世を推進する。そしてそのための暫定的な機関として政府が存在する。またこの一般意志を作る過程において、個々は合意を形成するためにコミュニケーションを交わす必要はない。これを受けて東は考えた。この古典的民主主義の立脚点をラディカルに解釈するならば、人々の合意である一般意志というものは議会制民主主義のような場で生成されるものではないのではないか?むしろネット上のグーグルやアマゾンで人々の嗜好がデーターベース化されて行くように形成されるべきである。そうすれば談合や密室政治のような不可解な決定メカニズムを排除したクリアな民主主義が生まれるのではないか。それを一般意志2.0と呼ぼう。
と言うのがこの本の主旨(だろう)。とりあえずこうした社会的な決定ルールを認めるか認めないかは別として、ここで言うようなことが事実として政治では定かではないが、今後様々な局面で発生することを止めることはできないと僕も思っている。
そしてこんなことは建築でもおこる。ある建築が好きか嫌いか、使いやすいか悪いか、ある場所が広いか狭いか、明るいか暗いか?例えばフェイスブックとグーグルアースのようなものが合体すれば、人々の行く先々でスマホがあなたに問いかけてくる。そしてそれに「いいね」と答えることで世界中のあらゆる場所の物理環境が評価されデーターベース化され逆にそのデーターベースがあなたをあなた好みの場所に誘うことになる。
建築基準法で定める様々な数値は殆ど意味を持たなくなるかもしれない。廊下幅が1.2とか1.6なんてナンセンスとなり得る。必要な数字はグーグルが持つようになるのである。
今までの建築計画を建築計画1.0とするならば、クラウドに蓄積されたデーターベース上に構築される建築計画は2.0なのである。我々はそれを安易に無視できるだろうか?それこそが人々の最も求める建築となるのではなかろうか?しかしそうであるからこそ、そうしたデーターの対極を求める施主は必ずやいる。しかしその時でさえも相対的な位置を計るベンチマークとして建築計画2.0は君臨する可能性がある。

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