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杉本博司の眼

朝から不穏な空模様。夕方には東京でも時間20ミリ降ると言う予報である。大学も休校になった。午後構造事務所との打合せ。YAMAの構造設計をしてくれた長坂さん来所。彼は打ち合わせにパソコンを持ち込んでその場で様々条件下の材厚を検討してくれる。今回も楽しみである。
終わって大学の会議に行こうと思ったが幸い会議も台風で延期になった。夕方信大のobが来所。すっかり手帳から彼の来る予定が抜け落ちていたが会議の延期で事なきを得た。夕食をともにしてから帰宅。杉本博司の『空間感』の残りを読む。この本は彼が個展をやった美術館との攻防記であり、その建築家との美的な交流やその建築家の他の作品を撮影する顛末なども書かれている。
その一つとしてヘルツォーグとの関係が面白い。時間的な順序は定かではないが、杉本はデ・ヤング美術館で個展をやっている。そしてバーゼルのシグナルボックスを撮っている。彼らはそんな仲なのだが、ヘルツォーグの事務所で杉本はヘルツォーグにプラダを撮って欲しいと頼まれこう考えた「撮る撮らないは私の自由裁量で、私が建築家に頼まれると、私の判断に狂いが生じてしまうから・・・・頼まれなければ撮ったかもしれないのに・・・・」そして彼は撮っていない。因みに恐らくデ・ヤング美術館も撮っていない。彼の採点表ではデ・ヤングは三つ星である(五つ星中)因みに彼の評はこうである「・・・ギャラリーは巨大な二つの箱状で、何の創意工夫も無いが、機能はする」
公の本でヘルツォーグをここまで言える玄人はいないだろう。杉本の美観の好みはあれども、歯に衣着せぬこういう率直な発言は胸が空く。
僕のニューヨークの親友が杉本は在米日本人アーティストの中では千住などとは違い本格的だと評価する。それを聞くまでも無く彼の眼は正確だと感じた。

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