建築も文章も時間切れで決まる
10+1の原稿を朝から推敲する。毎度のことながら締め切りの日になっても納得いくものにならない。建築も文章も同じだが最後の最後まで胃が痛い。日建の先輩だった加藤隆久さんが丹下事務所時代に丹下さんからこう言われたそうだ「建築は最初のアイデアで決まるか、時間切れで決まるかどちらかだ」。「最初のアイデアで決まったのは何ですか?」と聞いたらそれは目白のカテドラルだそうで他にはないとのこと。天才丹下にして最初のアイデアで決まるのは一つなのだから凡才たちは時間切れで決まるのだと言われた。というわけで加藤さんには最後の最後の最後まで「これでいい」とは言われなかった。そのせいかどうか分からないけれど自分で作っていても何時まで経っても現場に入ってもこれでいいと言う気持ちにはなれないし、文章も全く同じで何処まで直してもこれでいいとは思えない。八束さんが何かの本のあとがきで本と言うのは脱稿したその瞬間に最初から書き直したくなると書いていた。八束さんにしてそうならばもはや私などがそうでないはずもない。