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『思想』五月号:磯崎新のX

話題になっている『思想』2011年5月号岩波書店を補手の田谷君に買ってきてもらって読んだ。建築家の思想という特集で伊東豊雄、山本理顕の対談が40ページ近くあり。それを読んだ西沢立衛、磯崎新、内藤廣、平田晃久が寄稿している。西沢さん、平田さんはこの膨大な対談に付き合う気は無いようで軽くスルー。内藤さんは思想は語りきれないものとして、まあこれも2人の対談を真に受けていない。3人の気持ちはなんとなくよく分かる。というのもここでの二人の話はもう耳にタコができるくらい聞いているからである。僕でさえそうなら恐らく3人にとってはもう聞き飽きたという感じであろう。『思想』という一般雑誌であるから2人も確信犯的に同じことを語っているのではあろうが。
ところが磯崎さんだけはとても真面目にこの対談に向き合っている(かに見える)30ページ近い論考であるから量からしても3~4ページでお茶を濁している他の方とは意気込みも違う(ように見える)。しかしさすがに磯崎新、2人の対談に対応するふりをしながら自分を語っている語り口は何時もの通りである。柄谷行人の『世界史の構造』によほど感銘を受けたのだろうか、その修辞は受け売りである。
19世紀は都市を官僚が計画した時代、20世紀は大都市が自由経済市場の中で投機された時代、そして21世紀は超都市が電脳ネットワークによって「X」される時代だというのである。磯崎はこのXという手法で新たな職能を生きると締めくくり、2人の言っていることは既に過去のものであるかのごとく語っている。
このXの中身は読者の想像力いかんでどうにでもなるのだろう。少なくとも僕のセンスでは磯崎新のXには届かない。しかしそれとはまったく別に時代がXを求めていることは明らかであり、僕らがXを求めて行動せねばならないそんな背中を押してくれるような文章であることは確かである。

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