ごちゃごちゃを模倣せよ
ウィーン工科大学で木造建築の耐火性能の研究をしているTさんが学会出席で一時帰国、理科大にも顔を出してくれた。日本はさまざまな意味で(火災保険料が高いなど)木造が発展しないようになっていると嘆いていた。ウィーンではそういうことは無いと言う。
話に夢中になっていたらドクターの中間発表に遅刻(ごめんなさい)。その後九段下で会議、場所を移動して神楽坂で会議。会議は明らかに信大より多い。そのうえ内容の重複が激しい。今日の内容など99%教室会議で聞いたことである。
会議後雑務、雑務、飯、雑務。夜アンソニー・フリント(Flint, A)渡邊康彦訳『ジェイブズ対モーゼス―ニューヨーク都市計画をめぐる闘い』鹿島出版会(2009 )2011を読む。先日ジェーン・ジェイコブズの名著『アメリカ大都市の生と死』を通読したのでこの本も読んでみた。苦労の末アーキテクチャラル・フォーラムの編集者になった彼女が1956年ハーバード大学でのアーバンデザイン総会で上司の代役で講演した。ここにはディーンのセルト、ヒデオ・ササキ、ビクター・グルーエンなど再開発推進派のモダニストがごろごろしていたわけである。もっと言えばハーバードこそそういう輩を輩出する、彼女が反発してきたあらゆるものの権化だった。
そこで彼女は非難承知で都市再開発を否定し既存の近隣居住区画のごちゃごちゃ寄せ集めを模倣せよとぶったのである。この発言はやはりかなり冒険だっただろう。勇気ある言葉だと思う。ハーバードモダニズムはこれに大ブーイングを示したが彼女に拍手したジャーナリズムも一方にあり、それから彼女の闘いが始まるわけである。
この本思わず読みふけってしまう。彼女の理論というよりその戦いぶりに血わき肉躍る。僕の仲人をしてくれた恩師の奥さんがまさにこうした運動を現在しているが、ジェイコブズと彼女がだぶって見えてきた。