大学出版会
6時半のアサマで軽井沢へ。しなの鉄道に乗り換え小諸へ。ある建物の設計者の選定ヒアリング。6社の設計事務所の方とお会いし昼まで個別にインタビューする。すでにこちらで作った基本構想書を渡してありその実現性などについて聞いた。こちらの意向を全く斟酌しない事務所から是非これを実現したいと言う事務所までいろいろあるものだ。というわけで選定はいたって簡単に終わった。
昼をとってからアサマで東京へ。車中佐藤郁哉、芳賀学、山田真茂留『本を生み出す力―学術出版の組織アイデンティティ』新曜社2011を読む。知のゲートキーパーとしての学術出版社4社、ハーベスト社、新曜社、有斐閣 、東京大学出版会の書籍ラインナップ、組織アイデンティティについて分析した本である。4社は個人出版社、10人規模、100人規模、そして大学出版会という規模と性格の異なる4つの組織である。出版と言うのは営利行為であると同時に文化事業である。彼らの持つ悩みは実に設計事務所とよく似ている。例えばよい本は必ずしも売れるとは限らない。特に学術書であればなおさらである。しかし出版社の矜持とはそういう本を世に示すことである。だから定期収入が見込める教科書を売りさばき、会社の顔としては売れぬ名著を発刊することになる。
大学出版会というのは他の3つとはやや異なる。これは財団法人であり営利団体ではない。日本には大学出版会(部)が大学出版部協会に所属するものだけでも。これだけある。
北海道大学出版会、東北大学出版会、東京大学出版会、名古屋大学出版会、京都大学学術出版会、大阪大学出版会、九州大学出版会
弘前大学出版会、三重大学出版会
流通経済大学出版会、聖学院大学出版会、聖徳大学出版会、麗澤大学出版会、慶應義塾大、出版会、ケンブリッジ大学出版局、産業能率大学出版部、専修大学出版局、大正大学出版会、玉川大学出版部、中央大学出版部、東京電機大学出版局、東京農業大学出版会、東京農工大学出版会、法政大学出版局、武蔵野大学出版会、武蔵野美術大学出版局、明星大学出版部、関東学院大学出版会、東海大学出版会、大阪経済法科大学出版部、関西大学出版部、関西学院大学出版会
その中でも売上1位は東大出版会である。これはまあ当然。しかし意外なのは第二位。アマゾンやジュンク堂の売り上げでは東京電機大学出版局が東大に続く。理系の重要書を上手に刊行しているのであろう。それにしてもこれだけ出版会があるのなら、理科大に無いのが不思議である。先日理科大出身で某出版社にお勤めの方とお話していたら是非理科大出版会をとおっしゃってくれた。実現できれば嬉しい限りである。
それにしても本書を読んでいると人文系の出版社は人文系出身の方が創業し母校の人文系の先生たちの本を出すわけである。しかるに理工系の先生は人文系より出版に価値を置いていない。だから出版社に勤めようなんて言う理工系の人は少ない。東工大も出版会を持たない。加えてそもそも建築を理工系などと思っていない我々は理工系の出版社からの出版を期待していない。とは言え人文系の出版社とは縁が無い。だから出版のとば口まで進むのも一苦労である。こうなると理科大学出版会を何とか作りそこで理科ではない本を作ってみたいという夢が広がるわけである(矛盾?)。
コメント
放送大学教育振興会の売り上げは何位なのか気になりますね。
投稿者: Anonymous | March 7, 2017 2:30 PM