教育格差
下宿学生の仕送りが80年代並みに下がったというニュースが流れた。一方で学費は80年代並みにはなっていない。橘木 俊詔『日本の教育格差』岩波新書2010を読みながらこのニュースを思い出した。現在の日本の不況は仕送り以前に、経済的理由で子供の進学を断念する状況を生んでいる。まるで戦後の大学進学率10%代の出来事のようである。
僕が入学した1979年、国立大学の学費は144000円。現在は50万を超えている。この上昇率は物価上昇率をはるかに上回る。そしてこの高騰は私大のそれよりはるかに大きい。
信大で学生の留学先をいろいろ調べながらつくづく日本の教育は国民任せであることに腹が立った。本書の統計を挙げだしたらきりがないが、例えば、OECD諸国との比較を見てみよう。教育機関への財政支出のGDP比は28カ国中27位で3.3%(平均4.9%)同じく教育機関への財政支出の政府総支出比は28カ国中28位で9.5%(平均13.3%)である。とにかく教育は自分たちで勝手にやれよというのがこの国の方針である。
今年アルゼンチンとリヒテンシュタインへ学生二人が旅だったが学費は殆どただである。ヨーロッパ系の大学はごくわずかの例外を除いて学費は国が負担しているようだ(進学率が低いということもあるようだが)。一方アメリカは高いので選択肢に無かったが本書によればアメリカの奨学金制度はかなりよいようでもある(僕はその恩恵にはあずからなかったが)。小泉純一郎という人はアメリカの真似してネオリベラリズム的教育方針を打ち出したのだが、この奨学金のことは頭から抜け落ちていたようだ。
豊かな社会を作る上で教育がどういう役目を持つべきかは単純ではないが、少なくとも家庭の経済状況で教育が受けられなくなるような社会であってはいけないと思う。