住宅のローカリティとは
7時半のあずさで甲府へ。駅でカメラマンのUさん、雑誌社のNさんと会いい現場へ。撮影開始。
この住宅は平屋で43坪。3人で住むにはかなりゆったりしている。廊下が東西方向に3本通っているのが特徴である。この3本の廊下はクライアントの住み慣れた家の形式を踏襲したものである。中廊下は日本の明治後半、客人と住人のプライバシー確保のために生み出された。しかしその後都市部の狭小地からは消滅した。そして田舎のゆったりした敷地にのみ残り、クライアントの記憶の中にも染みついている。そんな記憶に少々過剰な(過激ではない)味付けをしたのがこのプランだ。
建築の地方性は長野に6年間いながら少々考えた。それは外観の問題よりもむしろ使われ方ではないかとある時から思い始めた。それは善光寺門前町で外観の形式のみを大事にする風潮に辟易していたこともある。むしろ生活の記憶をカスタマイズしながら連続させ、そして新た世界へつなげる方法をとらないことにはディズニーランドを量産するだけだと思うに至った。
住み慣れた廊下を過剰に図式化し、本来の機能であるプライバシーの確保を越え新たな世界への入り口を作れればと思った。3本廊下によって生まれた各部屋の二つの入り口は住人の動きに偶有性を生み出す。
建築はフレームであり重要なのは生きた世界。3本廊下図式はフレームに過ぎない。偶然性を付与された人の動きがフレームの中でちょっとした意外性を生じさせることが重要である。
遠路はるばる見に来てくれた方には感謝である。天気も良く快適な撮影とオープンハウスだった。