コンドル復活
朝九時に東京駅へ。三菱一号館とその脇の超高層を案内いただけるとのこと。たっぷり3時間近く見せていただいた。明治の組石造が忠実に再現されていた。それを現行法規に載せるために免振基礎の上に載せたり防火上の工夫をしたり、大変だっただろうことは想像に難くない。195,000㎡の超高層と5,000㎡の復元の工期が同じと聞くだけで充分であろう。ということはコストもそれなりにかかっていたと思われる。さてそこまでして美術館を造った事業者そして技術者には当然敬意が払われてしかるべきである。しかしどうも釈然としない。明治27年に完成したこの建物がどうして昭和43年に壊されてまた復元されたのだろうか?途方もない労力とお金をつぎ込む真の目的がよく見えない。
帰りがけ丸善によったら穂積和夫『絵で見る明治の東京』草思社2010が平積みになっているのでペラペラめくっていると最後のあたりに三菱一号館が登場している。そこには「とりこわしも復元も三菱の経営判断によるもので、文化財というよりも所詮は商業的な価値が優先された、、、」などと記されている。帰宅してネットをちょっと検索するといろいろな話に遭遇する。ネット上の話は虚実混合とはいえ、この開発の客観的な位置が見えてきた。つまり必ずしも諸手を挙げて賞賛されてはいないということである。とは言え、建築を志す者としては最終的にそこに良い建築があることが重要なことである。あそこにコンドルの建築があるということは無いことよりはもちろん素晴らしいことである。