パフォーマティヴなルール
午前中会議。午後の博士論文の審査まで時間があり松岡さんから頂いた本に目を通す。京都造形、京大、京都工繊など京都の建築学科が合同で進めているスタジオの作品をまとめた本である。こういう教育を一つの本にまとめるなんて凄いバイタリティだと感心する。指導者は松岡さん以外に田路さんや朽木さんなどの顔ぶれである。スタジオのテーマは町づくりのルール。京都ならさもありなんである。
時間がないのでとりあえず松岡ゼミの作品と松岡さんの文章を読ませて頂いたがおもしろかった。プロジェクトは町づくりのために一つのルールを作っている。それは建物の各敷地が建蔽率80%に基づき、残りの20%を供出してそれを全て道にするというルールである。つまり日本の家によくある塀と建物の間の30センチくらいの猫しか通れないような空間をすべて供出して道にすることで相互の多様な関係を生み出そうとしている。加えてそれらは全て道と考えて通常より緩い斜線制限をかける。そうするとこの小道がかなり有効な空間として建物周囲に発生するのである。
さて松岡論文はというと、いろいろなことが書かれているが、僕の分かる範囲で興味深かったのは法のパフォーマティブな意味というもの。法はコンスタンティブ(一義的で断定的な)なものと捉えるのではなくパフォーマティブな(使い方によって多様な意味作用を発生する)ものとして捉え、制定しようという考え方である。それは法が歴史的に社会構築的であるという彼の認識を更に一歩進めたものである。この考えはかなり面白い。ルールは必要悪(特に基準法は)という認識に侵されている我々は少し考え方を変えてもいい。その昔ガエハウスを解釈して10+1にそんなことを書いたことがあるがその考えにとても近い。ルールは使い方の多様性を許容しながらその中で様々な表情を生み出す道具として使われるべきである。