思想地図VOL5の東京の政治学は面白い
朝の「かいじ」で甲府に行く。車中東浩紀、北田暁大編の『思想地図vol5』NHK出版2010を読む。目次を眺め最初に目についた、原武史、橋本健二、北田暁大の鼎談「東京の政治学/社会学―格差・都市・団地コミューン」のページをめくる。戦後東京のどこにどの様な人間が住みどの様な文化圏が形成されたかを分析している。面白いことに(あるいは当然かもしれないが)それは電車の路線沿いに形成されてきたことが見えてくる。そしてここでは中央線沿線の文化圏と西武池袋線沿いの文化圏が浮き彫りにされていた。時期的には60年代がメインである。59年に江古田(西武池袋線)で生まれ、65年に大泉学園(西武池袋線)に引っ越した僕にとってはとても身近な話題である。そして伏線にある話題が団地であり、江古田の団地で生まれた僕にとってはますます身近な話題である。
それらを読みながら、まず驚いたのは団地とは当時のハイカラの象徴であり新中産階級の視覚化だという原の指摘。僕にとって団地とはやや所得の低い人たちが住む場所なのだという気持ちがあったのだが(裕福な人たちは一戸建てに住む者だと子供心に感じていた)どうもそうではなかったわけである。また西武池袋線は東大系の社会主義研究者が多く住んでいたという指摘にまた驚いた。そう言われると両親がこの沿線に戸建を買ったのはそうした理由だったのかと思わなくもない(それが本当の理由だったかどうかは分からないけれど)。北田も本気で言っていたが、知識人がどこに住みどこに引っ越して一生を終えるかということを丹念に調べ東京の文化地図を作る作業は十分研究に値することなのかもしれない。