花森安治のプラグマティズム
甲府での打合せを終え、今日は長野に向かう。車中、読んでいた本(西村佳哲の『自分を生かして生きる』バジリコ株式化会社2009)に面白い引用があった。『暮らしの手帳』を創刊した花森安治のインタビュー記事である。彼は大阪の警察の発想を褒めている。それはこんな文章だ。「あのね、御堂筋のどん詰まりで、心斎橋から出てきたところあたりにねえ、空きタクシー駐車禁止なんていう立て札が立ってますわ。ところがその下に『但し、雨雪の時、除く』と書いてありますわ・・・」彼はこの看板を凄く褒めている。この話はかなり昔のことで今時こんなおおらかな警察の警告があるはずもない。銀座あたりにこんな看板があったら感激だ。しかし大分前のこととは言えお上の文章にしたら上出来である。これを読みながら前に読んだローティ―のプラグマティズムの話を思い出した。きっとローティーもこの看板に感心するだろう。曰く「プラグマティズムの核心は真なる信念を『事物の本生』の表象とみなすのではなく、うまくことをなさしめる行為規則とみなすところにある」。何が正しいかなんて考えるよりは、どうすればうまくことが進むかと考える方がよほど前進的である。