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神殿か獄舎か

長谷川堯の『神殿か獄舎か』相模書房1972のオス建築とメス建築の話を読みたいと思って探したが高価な古書しか見つからなかった。そしたらある人がSD選書で復刊されたと教えてくれた。早速取り寄せザーッと斜め読んだ。これが35歳の時の処女作とは信じがたい。藤森照信が解説で長谷川を学兄として慕っているのが納得できる。大正時代の日本の表現派(メス建築)を初めて正当に評価し、それを武器に昭和のモダニズム(オス建築)を初めて相対化したのがこの書だと藤森は言う。そして自らの建築がまさに長谷川の称揚したその精神に立脚していると心の内を吐露していた。それは作り話ではないかもしれない。
長谷川の本は建築友情と建築旅愁という二冊の中公新書を数十年前、多分高校時代、あるいは浪人時代に読んだような気がする。建築に魅かれるきっかけだったように記憶する。その後大学で篠原イズムに浸ってからは、表現派へのこうした心情からは疎遠になってしまった。しかし今こうして読んでみると、再び長谷川の心情に同期する自分がいるのに驚く。大正建築探検をしてみたくなった。

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