フリーな一日
やっとフリーな1日。今日は町の骨格を見たく、南へ向かう。先日のベルグラーノ大学の課題がそうだったように、この町は南北が不連続。唯一南北に走る地下鉄の終点で降りる。ここは地上鉄道の始発駅でもある。地下鉄を上がるとヨーロッパ風の壮大な鉄道駅に出る。フィラデルフィアのように巨大。しかしそこから一歩外に出ると、突如町が荒廃した感じである。タクシーでカニミートという大西洋の入り込んだ小さな漁港の町に辿り着く。ボカジュニアーズの本拠地もここにある。ボカは漁港の労働者が作ったチームだそうだ。この比較的荒れた(と言えば言い過ぎだろうが)ダウンタウンにスタジアムは建っている。タクシーの運ちゃんが分らぬスペイン語で何か叫びながら何度もスタジアムを誇らしげに指さしている。カニミートにはアルゼンチンの代表的画家キンケラ・マルティンがカラフルに仕上げた町。町にはキンケラにあやかった画家が絵を売っている。モンマルトルのようであるが、彩度の強い色は南である。
カニミートにいたキュートな子供たち
昼を食べて市内を巡回する二階建てバスに乗る。24時間以内ならいくら乗っても600円。一気に北へ向かう。町が徐々に整備されていくのがよく分かる。海に面して新しく埋め立てられてできたお台場のような島に入ると超高層が林立している。
ブエノスアイレスの超高層
かなり意識的に街区に対して45度振って建てている。当たり前の手法だが効果的。カルトラバの橋を横に見ながら西に向かう。
カルトラバっていくつ橋作っているのだろうか?
セントラルパークの4倍ある(と聞いた)公園を横に見る。これだけ大きい公園を維持するのはかなり大変だろうが金が無くても、国の借金を返さなくても、こういうことをやる所がラテンのおおらかさだ。バスは再び南に向かう。途中で降りて、パレルモ地区に行くべく地下鉄に乗ろうと駅で待っていたが、人もいなけりゃ電車も来ない。すると駅の係員がやってきてなんだか言っている。どうも電車は来ないぞと言っているように感ずる。すごすごと改札を逆戻りする。どうもストのようである。喜納さんの話ではこの国ではデモやら、ストは当たり前。デモで道路を封鎖しても警官は排除さえしないそうだ。仕方ないので進路変更してサン・テルモという昔の面影が色濃く残る街並みに向かう。ボカ地区同様北のヨーロッパ的な小奇麗な街と対照的に泥臭い(メキシコのような)低層の町である。現在では骨董屋が数百と立ち並ぶ。パンパの民芸を現代的にアレンジした店を覗く。このあたりは観光客も多いせいか兄ちゃんは英語がよく話せる。僕が東京から来たと知ると、トヨタカップ常連のボカジュニアの話をし始めた。今日はボカの大事な試合があると言う。今晩見に行くと言うと羨ましがられた。
サンテルモの市場食料品と骨董店が同じくらいずつ並んでいる
6時ごろ、ぎりぎりホテルでバスに乗り込む。今日の試合はてっきりさっき見たボカスタジアムでやるのだとばかり思っていたのだがアウェイである。相手はベレス。ブエノスアイレスの西の方に向かっているのだが、結構遠い。いろいろ客をピックアップして着いたら8時半。バスの兄ちゃんがくれぐれもスタジアムで写真を撮るなという。べレスの本拠地だから荒れるのでカメラは危険だと言う。
この試合は「ニッサン南米チャンピオンシップ」と言う。最近はスポーツの試合を宣伝用にスポンサーするのが常識だろうが、ここまで来てニッサンに会うとは思わなかった。巨大スクリーンからは何と大音量で日本語の宣伝が流れている。日系人がいるからか?
サッカースタイルは実に日本に似ている(ような気がする)。試合前の応援合戦は激しいが最近ではJリーグも負けてない。ゴール裏の公式サポーター以外も殆どの客はベレスのサポーターであり、年季の入った酔っぱらい労働者たち。ボカは港湾労働者に支持されているというがベレスも負けてはいない。僕らの席は放送席前のかなりいいところだが周囲はこの過激な親父たちが飛び跳ねるは叫ぶは歌うはの大騒ぎである。入る時にボディーチェックはされるしペットボトルは没収されるのに当然のようにサポーターたちからはテープの嵐、発煙筒、花火である。どうやって持って入ってくるのだろうか?サッカーよりも彼らに圧倒された。恐ろしくてひたすらベレスの勝利を祈っていたら見事1-0でベレスが勝った。
試合前の興奮
アルゼンチンと言えばサッカーだがこれはどうも下層階級の楽しみのようである。上流階層はポロや競馬。これらの競技場はブエノスアイレスでも北のいいところにあるし。