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場所

事務所でコンペの打ち合わせ。空いた時間に丸田一『「場所」論』NTT出版2008を読む。副題である「ウェッブのリアリズム、地域のロマンチシズム」というのがなかなか興味深い。参照している書物が既読のものが多く読みやすいかと思いきや、なかなか面倒くさい本である。副題が示す通り、没場所性の現代社会において、ウェッブ空間の中に生まれた記憶の故郷がむしろ場所性を持ってリアリティを持っているというのが著者の主張。しかし現実の場所が現実性を失い、非現実の場所が現実性を持つという著者の示すねじれ現象は理解はできるが、それほど確かなものとは思わない。地域のロマンチシズムは夢物語というわけでもなく、そこにはリアルで生き生きとした生活もあるものだ。でも我々がそうした二重の世界の中に棲息ているのは紛れもない事実であり、それを無視してローカリズムを能天気に表現するわけにもいかない。しかし、でも、僕らの職能は現実の中に再度場所性のリアリティを求めているのである。そしてその志向はどちらか一方しか受け入れないというものではなく、その二重性を許容しながらそのリアリティを模索するのである。もちろんその場所性は相互に影響されながら変容していくのであろうが。

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