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美術史

「建築史で語られる建築は教会か宮殿」とは誰もが言うこと。だから建築史からはみ出た建築がたくさんあり、それが実は凄いと口では言う。バーナード・ルドルフスキーの『建築家なしの建築』なんていう本の魅力を知った顔して語ったりする。でも自分は本当にそんなヴァナキュラー建築を知っているのだろうか?と少々不安。そんな不安を一層高めてくれるのが、佐藤道信『美術のアイデンティティー』吉川弘文館2007。著者曰く、美術史なるものは市民革命後の近代社会が過去の宮廷コレクションと教会文化を陳列し、さらには自国の帝国的権威を誇示するために作られたmuseumという制度の基礎を作る学なのであると言う。ということは同じ様に建築史も多かれ少なかれ(museumという制度の中にははいらねど)、自国の遺産を誇示するための分類指標であると考えて間違いなかろう。であれば権威に裏付けられたものしかここには登場しないのはやむを得ぬこと(もちろんこうした美術史は19世紀までのものでありモダニズムはそもそも教会も王権も基盤としていないのだからその分類指標も全く別物になる)。僕らはモダニズムより前の世界の建築(日本はまだ身近なので)の本当の姿を知らない。と謙虚に受け止める方が多分正しいのだろう。この美術史という制度はあまり信用しない方がいい。

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