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悪党

滝口範子『行動主義 レム・コールハースドキュメント』toto2004を読んだ。予測はしていたけれど、こいつかなりいい加減な奴であることが理解された。でもいい加減だからできるさまざまなことがあるということもよく分かった。コールハースの建築はかっこいい、、、のだが時として急に醒める。その理由を、この本の中のインタビューで伊東豊雄が言い当てていてる。「それは99%の建築家がたどっている『かたちを生み出すプロセス』を割愛するということです・・・・レムの場合は、その普通の建築的土俵を踏まない。プログラムのダイヤグラムが突然かたちに変わると言うようなこともあって、こんなグラフィックで描いている物をいきなりかたちに移してしまっていいのか、」。そう、意図的に彼は、ダイアグラムを直接、形に変換する。そのやり方を真っ向から否定はしないし、レムのことだから、直接形にすると言ったところでとんでもない量のスタディをしていることは分かっている。しかし時としてダイアグラムがややシンプルに過ぎないか?と感じる。あまり確信があるわけではないのだが、ダイアグラムと言うヤツは抽象の産物である、物事のメジャーな部分だけをぐっと掴み出したものなのである。それをそのまま形にするということがとてもモダニスティックにみえてしまうのである。ダイアグラムは否定しないが、ダイアグラムは可能な限り錯綜しているべきものである。
しかし建築はともかく、彼の不良のような生き方はぞっこん惚れ込んでしまう。人間は年嵩を増すと共に修得してしまうものがある。貫禄、衒学的な知性、権威、等などが倫理と言う隠れ蓑に包まれながら醸し出す雰囲気である。そのおかげで人間はどんどん醜くなっていくのだが、彼にはそうした余分な物がくっ付いていない。どういうわけかこうしたピュアな人間は大人の世界では悪党と呼ばれてしまう。しかし、その部分だけは文句なくカッコいい。

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