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コミュニティ批判

大学へ向かう車中竹井隆人『集合住宅と日本人ー新たな共同性を求めて』平凡社2007を読む。著者は建築畑ではなく法律を専門とする。とはいっても弁護士だとか法学者というわけではなく、あくまで集合住宅やコーポラティブハウジングの研究や建設の実践の場に加わっている方である。彼の主張は一言で言えば、現代のコミュニテイとは強い絆で結ばれた古典的な村社会のようなももではなく弱い絆に組織された統治体であるというものである。そもそも集合住宅が生まれるような都市部において古典的なコミュニティは望むべくも無く自由を謳歌しながら発生すべきコミュニティにおいては他人を尊重するweak tie(弱い絆)が重要である。そしてそれを実現するのは極めてシステマティックな住民熟議の場の設定であると言う。
信州大学にいるからか?当世学生気質か分からないけれど、昨今、コミュニティを渇望する学生をよく見かける。建築家として良いか悪いか分からないけれど僕は個人的には村的な暑苦しい人間関係は好みではない。よってこの手のコミュニティ渇望者に弱い。そもそもコミュニティは建築の問題とは考えにくいと思っている方である。だからと言って公共空間とか集合住宅における中間領域のようなものをデザインすることに意味を見出せないと思っているわけではない。それはそれで建築の空間としての意味を持っている。しかしそうした空間がコミュニティを創出するとは思っていない。それは別の問題だと思ってきたし思っているのである。
そうした自分の苛立ちがこの本を読むと少し解消される。僕の気持ちを多少代弁してくれている。もちろん、では、竹井氏のやり方で100%コミュニティができるのかどうか僕には確信はないし、未だにコミュニティを作ることが集合住宅にとって常に最良のことかどうかは分からない。しかし、少なくとも建築プロパーの人間たちが持つコミュニティ幻想に対してかなり的確な批判を与える良書であるように思う。

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