17世紀オランダ美術
10月28日
すっかり17世紀オランダ絵画のとりこになってしまった。発端は国立新美術館の展覧界だが、その後有吉さんのフェルメールを読み、マーティン・ジェイが17世紀オランダ美術の視覚を近代3大視覚の一つにとりあげていたからである。そしてこのジェイの主張を裏付けているのはは出版ともに美術史界に物議をかもしたスヴェトラーナ・アルパースの『描写の芸術ー17世紀のオランダ絵画』ありな書房1995(1983)である。残念ながらこの本は絶版で見つからないのだが、ありがたいことに四谷図書館にあり午後自転車で出かける。今日は台風が通り過ぎ穏やかないい日である。アルパースは17世紀オランダ美術をイタリア美術を評価する視点で見る過ちを説く。そして当時オランダの視覚特質をオランダ総督の秘書コンスタンティン・ハイヘンスの膨大な資料を読み解くことから始める。ハイヘンスはイタリア人文主義を擁護するかたわら、当時の科学的発明である顕微鏡、望遠鏡に夢中になり自らその収集家となる。アルパースは次にケプラーの発見に言及し、網膜上の像と視覚表象の差を明確にしたことをとりあげる。
ここまでしかまだ読んでいないのだが要するに、こうした当時オランダの文化的コンテクストは絵画というものの社会的位置づけをイタリアのそれとは大きく変更し、神学的、物語的なものから、日常的、観察的、写真的なものへ移行したというのである。
こうした芸術の社会構築的な説明のしかたは必ずしも100%正しいとは限らないのだが、しかし僕は個人的には興味があるし、きっとそうなのだろうと思っている。