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大森義太郎

7月22日
『教養主義の没落』、『丸山眞男の時代』を書いた竹内洋の『大学と言う病』が最近文庫本になり長野に向かう車中読んでみた。竹内氏は京大の教育学部の教師だが上記三冊はいずれも東大が舞台である。教育を社会学的に分析する氏特有の分析観においては日本の教育問題は結局最高学府を舞台にせざるを得ないということなのだろう。
この『大学という病』は東大経済学部(東大というより東京帝大という方が正しいが)の思想的な亀裂に焦点をあてたものでありその主人公は大森義太郎という助教授である。亀裂とはいわずと知れたマルクス派対非マルクス派のそれであり、大森は前者に属する。府立四中、1高、東大というエリートコースを歩み、大正13年弱冠25歳で助教授に就任。マルクス主義がまだ主流ではない時代に外国人教師エミール・レーデラーの影響を強く受けマルクス主義の闘士となる。そして三・一五事件に関連し、文部省による大学の左傾教員廃絶指示により、自ら辞職した。
大森は実に痛快な教師だったようだ、助教授就任直後からその筆力が買われ多くの文章を様々な媒体に書き残しているが、学内の新聞に連載で先輩教授である土方成美(非マルクス派)をこけおろした。土方のとりたての博士論文が本となった『財政学の基礎概念』について「『財政学の基礎概念』は噂によると五千部売れたそうだ。わかる奴は広い世界に幾人と無さそうな――もしかすると土方教授一人かもしれない」と揶揄したのである。
両派の対立の構図は延々と続いたようである(読了していないので後のことは分からないが)そこには大内兵衛、向坂逸郎と言った親父の恩師である元祖日本のマルクス主義者たちの名前も登場している。なんとなく聞いて知っていた当時の大学環境がリアルに再現されてくる。

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