イコノロジーとは言わないが
パノフスキーによれば盛期スコラ学は信仰とうい聖域と合理的知識の領域との間に一線を引いた。しかしその聖域の内容は明瞭に識別できることを主張した。その知の体系が建築においても現われているというのがパノフスキーの主張である。堂内のヴォリュームと外部の空間の間には一線が引けるのだが、堂内は構造体を通して外部に明瞭に見て取れるのだという。パノフスキーはその時代のエピステーメーと建築を重ねてみたり、 『<象徴形式>としての遠近法』では透視図法がその時代のエピステーメーを作り上げていると分析した。
パノフスキーはいわずと知れた『イコノロジー研究』の著者である。上記ゴシック建築とスコラ学の関係はイコノロジーと呼ぶような図像と意味の緊密な関連があるとは思えない。もっと推理と直感に富んだスリリングなものである。誰かはそのやり方を強引だと言ってやや否定的に見ているが、私はむしろそこが面白と思っている。
建築は確実に時代性の産物である。そしてそれだから建築は面白いし鑑賞の価値がある。イコノロジーとは言わずとも、イコノロジー的な見方をせずして何をみるのか??と自らの論文をチェックしながら、牽強付会な自分を垣間見ると、嫌になったり諦観したりである。