読書
ナタリー・エニック著、三浦篤訳、『ゴッホはなぜゴッホになったか』、藤原書店を読み終える。ゴッホは還元すればトマス・クーンの新しいパラダイムに位置しているという。ではどのようなパラダイム転換を図ったのか?その最大のものは「異常なものが規範化されて芸術における規範性とは規範の外部にあることだとされるようになった」ということだ。ゴッホがその最初なのかなあ?とふと疑問にも感じたがそうなのだろうか。その後、熊倉敬聡のエッセイ集『脱芸術/脱資本主義論』、慶応大学出版会を読む。がんばらなくてもいい社会を目指そうという話である。昨今多いこの手の話は雰囲気は分かるのだが、まだ実感としては共感できないでいる。夕食後ゲルノート・ベーメ著、井村彰他訳『感覚学としての美学』を読み始める。これは読み始めたばかりだがちょっと面白そうだ。美学をその原義であるところの感覚の学に戻せという議論(岩城見一の『感性論』とかW.ヴェルシュの『感性の思考』など)の一つだが、芸術批評の基礎となっているこれまでの美学を、芸術以外の二つの分野に適用しようというところから始まる。それはデザインと自然である。論旨が明快なスタートとその二つはたまさか今の僕の興味のあるところであり、その意味で期待したい。