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等伯

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長谷川等伯展が国博で行われている。大変混雑しているとの噂なので平日の午前中をねらって行ってみた。しかし皆そう考えるからやはり大変混んでいた。等伯の作品は色々な場所で断片的に見てきた。どこかの寺の特別公開で真っ暗な塔の一階に案内され、懐中電灯で壁の絵を見た。先日は金地院で猿を見た。だいぶ前に国博で松林図屏風も見た。しかしこうして若い時代から一連の作品を通してみたのは初めてである。結構期待して見に行ったのだが、期待が大き過ぎた。加えて横で「これは等伯ではない」としきりに呟く人がいて「そう言えばそうかなあ」と洗脳され、どうも批判的に見る状況に陥ってしまった。「このカラスとあのカラスが同一人物の筆遣いとは思えない」とか「このだるまとあのだるまの品格が違う」などなど。
確かに横の呟きが無くとも、初期の入念な仏教画のタッチと時たま現れる酷く雑なタッチと松林図の墨を裏からぼかし塗りした濃淡の緻密な技法とがどうも一連のものに見えてこない。まあ、同一人物じゃやなくてもいいモノはいいとも言えるのだが、等伯と言ってしまえば価値が出るみたいな所があるのかと思うとちょっと醒めてくる。狩野派に対抗して描いた金色原色も結構面白いのだが、また横から「全然良くない」と呟きが聞こえてくる。今度は一人で来ようかな?先日読んだ本に印象派が爆発的に売れた陰には有名な画商が作成した写真入りの目録があったからだと書かれていた。日本のアートには落款はあってもサインが少ない。印の文化とサインの文化の差と言えばそうのだが、そのおかげで一体これが本物かどうかの判断材料が少ないような?それに多くの作品に制作年代がはいってない。これもその作品の来歴がはっきりしないことを物語っている(のでは)????洗脳されて疑心暗鬼になった展覧会だった。

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