六本木クロッシング
中西信洋 「レイヤー・ドローイング#001~081 2004・05」
六本木の森美術館ができたころ六本木クロッシングという展覧会があった。3年ごとに行われると言うことで今年またやっている。前回見たときは印象に残るものはあまりなくクロッシングどころかパッシングしてきたような気がする。3年経ったらこちら側の見方がいろいろ変わったせいか見るもの見るもの結構楽しかった。もちろんこちらが変わっただけではなくあちらも変わったのだろうが、思い出してみると並んでいるものは、こう言ったら悪いがそんなに変化したとは思えない(いやーそんな乱暴なこと言っていいのかわからないが)。こちらが変わったというがでは何が変わったのだろうか?それこそ作品を見ながら面白いと思う点こそが僕が変わった点なのでそれを羅列してみよう。
① 誰のビデオアートか忘れたが、大きな木の板を放り投げては土の上をざざーっと横滑りするシーンを延々繰り返すシーンがあった。そして次はその木さえ見えずにただ、ざざーっと言う音だけが聞こえ遠くの町並みしか写されない。なんだか見ていてあほらしくなってしまったのだが、このなんとも不条理劇のような延々と続くシーンが面白く感じられるようになった。
② 鬼頭健吾というアーティストの巨大耐火被覆のお化けとミラーボールのごときものに取り付いた回転するブラシのようなもの。こうした物の表面の物質性のようなものにこだわる感覚が分かるようになった。
③ できやよいの横尾忠則のような構図の中に細密画の如く書き込まれたミクロの世界が前にもまして魅力的に見えるようになった
④ 中西信洋の100枚近い40センチ角くらいの写真のポジ。これらは天井からつられ全体として蛇の如く弧を描きながら浮いているのである。この空間性とポジの中に展開される100枚の時間性にコンセプチャルな面白さと同時に造形性を感じられるようになった。
⑤ 原真一の彫刻は大理石。普通大理石の彫刻の対象は一つである。ダヴィデとか。ところが原のそれは対象が100くらいあってそれが丹念に彫りこまれている。昔ならただ気持ち悪いと思っていただろうが、今はこのカオスがとても心地よい。
⑥ などなどまだいろいろある。
しかしなにはともあれこうした説明を書かずとも見た瞬間に「あっ面白い」と、「あっつまらない」と自分が思うようになったという点が3年前からはだいぶ変わった点である。