山田ちさと
アリカ・アート・サイトでhttp://www.arika.net/で山田ちさとさんの展覧会が行なわれている。彼女は私と同年代(一つ下)の美術家である。会場で説明を聞く。「画布の両面から色つけてるのよね」と言う。おおそれはこの間青森で見聞きした棟方志功と同じである。しかし棟方は基本的に淡い色を付けたかったからであり、そこにコンセプチャルな意図はない。山田の場合は裏からつけた色はこの絵の最初の「図」なのである。その図を今度は表側から見る。薄い図の周りに余白が広がる。それは「地」である。この地をまた丁寧に表から色づけするそうである。そうするとこの地が図になる場合もあるし、あくまで地として残る場合もあるのかもしれない。それは最初につけた色の塊の纏まり感によるだろう。ゲシュタルトの法則に従うはずである。そしてやや図と地があいまいになったところで再度色付けしながらその関係をあいまいにしていくようだ。しかしオブジェクトとして対象を意識化するのがアートの基本だとすればこうした非オブジェクトの部分を意識化しようとする試みは面白い。建築に応用的に考えれば、建築とは常にオブジェクトでありこのオブジェクトをどう消しながらしかし見せるかというのが昨今の建築デザインの常識となっている。非オブジェクトとしての環境をどう作るかというのが重要と考える人も多い。そのあいまいなバランスが建築であり、その意味でこの絵から得るものは多いかもしれない。