藤森建築
藤森照信の展覧会がオペラシティのアートギャラリーで始まった。散歩がてら覗く。最初の部屋の最初の展示物は1メートル角ぐらいの大きな板に塗りこまれた様々な仕上げ材料である。その材料の横に最初のコメントがある。彼にとって建築の一番大切なものは、構造でも設備でもなく、また壁でも柱でもなく、「しあげ」なのだと書いてある。うーん、そうか。言われてみれば確かに藤森建築において仕上げ材料の重要性は言うまでもないが、彼の言いたいことはそんなことではなくむしろ、反モダニズムとしての民族学的というか世界建築的というか、ローカリズム的というかとにかくとうしたものの集大成としての思想や形だと思っていた。それがいきなりきたね、「仕上げ」。質料研究家坂牛としては仕方ない藤森を質料建築家の中に数えておかなければならない。しかしここまでべたにくるとこれは志村けんの漫才のようなものだ。しかしやるなら徹底してやる方がいい。ディテールも重厚に。防水層の上に空気層があったり断熱材があったり、その上に仕上げ用の下地があってさて強烈な仕上げがのっかる。この仕上げはかなりの抵抗力を自然に対して持つであろう。石や金属や植物は逞しいかもしれない。
ところでコルビュジエの現代的意義という原稿を書なければという強迫観念にかられて展覧会を見ているといろいろなものがコルビュジエ的に見えてくる。「タンポポハウス」や「ニラハウス」は「屋上庭園」。「高過庵」は「ピロティ」である。コルビュジエの5か条の近代建築原則のうち2か条が藤森の中に見て取れる(?)とは、藤森が立派なモダニストなのかコルビュジエが立派なアンチモダニストなのか???答えはどちらかと言うと後者。コルはやはり一枚岩ではないのである。だからこそ未だに使用価値が残っているのではなかろうか。