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日本絵画の近代

美術館に行くのも久しぶり。近代美術館で「揺らぐ近代」なる展覧会が開かれている。日本の19世紀後半から20世紀半ばくらいまでの絵画が並んでいる。三つほど好きな絵があったので紹介する。
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展覧会のカタログにも書いてあるが、黒田の「湖畔」は皆が日本画と思い違いをする。陰影表現から来る立体感がないから。加えてこの淡さと立体感の欠如がなんとなく日本画を思わせるのである。しかしこの立体感の欠如こそ時代がモダニズムに入り込む一つの関所のようなものだったと言えないこともない。黒田はパリでその臭いを嗅ぎ取って日本でそれを無意識に描出していたのかもしれない。

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浅井忠はフランス留学時代にアール・ヌーヴォーの影響をひどく受けた。それはこの絵を見れば一目瞭然であるが、なんともこのアールヌーヴォー経由の琳派の金に浮遊する農婦の姿は現代的である、黒田より一歩現代に近づいて来ている。

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そして熊谷の猫である、黒田、浅井から半世紀。もうモダニズムも終わる頃だが、対象の徹底した抽象(とはいっても猫の姿はあるのだから、そんな徹底したというほどでもないが)はマチスのようでもある。しかし素描に長けた熊谷の抽象とそのわざとちょっとうまへたな線は分野は異なるが、ミッドセンチュリーのフランクゲーリーという感じでもある。思わず笑いがこみ上げる。
しかし日本美術も世界と連動しているという展覧会の主旨は伝わってくる。

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