コルの壁紙
モダニズムは形式と質料という建築の二成分のうち形式性を重んじ質料性を抑圧した。そしてそれは美術一般と考えたいところだが、ちょっと違う。絵画ではグリンバーグの主張した抽象表現主義とは平面性、カンバス、そしてメディウム(絵の具)をその自律性の要素と考えたのである。メディウムとは正に質料である。マチエールである。絵画では質料性はさほどの抑圧を受けていない。しかし、彫刻のようなものを見るとき、例えばミニマリズムを概観すれば、それは形式性の浄化の末に出来上がったものである。それゆえにそこには素材性が現われたり、ランドアートに行ったりする。ジャッドだって後半はCOLORISTと言われるくらい色に狂う時期があるのである。形式性の抑圧が質料性に向かわせる。
同様にコルビュジエがカラーキーボードを作っていたという事実は最近発見されたし、サボワでもジャンヌレ邸でも行けばその多色に気がつく。しかしそうした色はまだデ・スティールやバウハウスなどの関係からして頷ける。しかしコルが壁紙デザインしていて、しかもそれらが大理石まがいの模様ものであったと言うのはちょっと驚いてしまう。