東大公開講評会
土曜日に東大建築学科の公開講評会を覗きに行った。学外審査員だけで審査するという大胆な試みである。川俣正、佐々木睦郎、高間三郎、西沢立衛、古谷誠章、山本理顕という素晴らしい審査員である。発表者は65名の中から選抜された12名。残念ながら全部をみることはできなかったが僕の感じたことを少し記しておこう。
先ずは、一般の大学は前期後期で卒計と論文をやるのに比べ東大の場合4年後期に卒計と卒論をいっぺんにやる。そんな過酷な状況でA1 12枚のドローイングと巨大な模型を制作している。それはとんでもないバイタリティである。すごい。それだけで拍手を送りたいと思った。
内容もそれを考えれば皆よく考えられていると思った。
新宿御苑をもっと人々に開かれた場所にしようという案があった。素朴だけどとてもいい発想だと思った。しかしそれを千駄ヶ谷の駅ビルのようなものを作ってその場所を公園の結界にしようとしていた。それに対して、西沢氏が公園全体の境界を取り除いたらいいのではと述べていた。とても的確な指摘だと思った。僕が聞いたコメントの中では一番インパクトがあった。
街中の4つの神社を町のコミュニティ施設にするという案には夢のような、でもなんとなくありえそうな不思議なリアリティがあった。
五反田の古い都営アパートのリノベーションの中に周辺町工場を挿入するという案があった。リノベーションを街づくりの核にするという案である。「リノベーションは今日的課題だけれど、対象とする建物が本当にそうするほど魅力的かどうかというところが大事じゃないですか」という西沢氏のコメントはまたもやとても的を射ている。
青山の公営集合住宅を増築する案。これは正直言って良く分からなかった。この増築によって何がどうよくなったのか?
東急東横線の渋谷から代官山が地下化されるにあたり、高架の構造物を利用した都市施設は諸審査員に好評のようだったが、僕にはあまり面白さが分からなかった。
僕が見た中で一番好きだったのは地下鉄丸の内線の御茶ノ水駅のリノベーション。それは僕が昔この駅をよく利用していたことも手伝っている。子供の頃から地下鉄駅の暗い印象が嫌いだった。
面白い理由その①地下鉄の駅を降りて即外が見えそうなこと。地下の駅なのに駅が崖にあるから、崖に穴を空ければ外である。地下鉄駅とは思えぬ新しい場所ができると思った。
理由その②都市の崖地はリンチがエッジというように、とても重要な都市の環境要素であり、そこを建築的に構築することはうまくやればとても印象的な風景をつくれる場所だと思う。つまりそれは一つのランドマークである。
理由その③この案は多くの斜め線で構成されている。佐々木先生は必然性が無いと批判していたが、僕は、地下鉄の駅という地下であることを余儀なくされ地上に上がることが主目的な施設において、多くの斜路が走る場所となるのはむしろ必然だと感じた。つまりデザインのためのデザインではなくとても素直なカタチだと感じた。加えて、ドローイングがとてもきれいで新しかった。
僕は半分しか見ていなかったが、後半もきっと面白いものがあったと思う。