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中国アカデミズムの仕組みを見る

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昨晩は上海に移動して同済大学の支教授、東南大学の郭准教授と会食だったが三菱地所設計の中国総経理(社長)も来られた。なんと彼は大学のスキー部の後輩の樋口だった。僕が院生の時に一年生、今では運転手付きの社長である。懐かしい。ぜひ現地法人で日本語が話せる中国人の設計者が欲しいと言っていた。うちの研究室に候補がいるのだが、、、、、

会食の話題で大学ランキングの話となる。試験の国中国は日本以上にはランキング付きである。中国の建築学科にはクラシック4というのがあってこれは他の大学を圧倒しており、それらは清華大学、同済大学、東南大学、天津大学。この4つに入ると給料が違うそうである。
その次にニュー4というのがあってこれらは華南理工大学、西安科学技術大学、ハルピン工業大学、重慶大学。そのあとに浙江大学、南京大学、大連理工大学などがあるそうだ。ふーんという感じだが、今回のシンポジウムに中国国内で呼ばれている教授はこのクラシック4だけである。この4つの権威を守るためにこういう会議を行い世界から著名人を呼んで格をあげているという風にも見えるわけである。

さて二日間の会議を終えて素直に思うことは二つある。
1) 歴史、建築論VS建築意匠という構図
この二つのシンポジウム(現代建築論シンポジウムとアジア建築センターオープンシンポジウム)は東南大学の建築学科の中の建築歴史、理論研究所(Institute of Architectural History and Theory)の主催なのであるが、実は建築学科には以下のような3つの部門と4つの研究所がある。
建築部門(Department of Architecture)
ランドスケープ部門(Department of Landscape Architecture)
都市デザイン部門(Department of Urban Cesign)

建築アルゴリズム研究所(Institute of Architecture Algorithms and applications)
アート、デザイン研究所(Institute of Art and Design)
建設技術、科学研究所(Institue of Building Technology and Science)
建築歴史、理論研究所(Institute of Architectural History and Theory)

学生は一学年170人いて大きく3つの部門 建築、ランドスケープ、都市デザインに分かれて入学し2年生までは皆同じ基礎教育を受けて3年から専門に分化して、さらに5年の卒業研究では細分化された研究所に行くことも可能となる。マスーターに学生は540人、ドクターに178人おり学生総数は1568人(中間部の数)。教員数は教授32、准教授52、助教45で全部で129人のフルタイムスタッフがいる。教員一人当たりの学生数は日本の国立大学よりやや多いくらいである。

さて話を元に戻すとこの建築歴史、理論研究所が自らの行事としてこのシンポジウムをやっているのだが、建築部門の先生(だいたいが建築家なのだが)彼らは比較的このシンポジウムを外から冷ややかな目で見ている。というのも建築論といいながら彼らの視点は基本的に歴史であるという認識だからである。歴史で意匠は作れないと言いたげである。このあたりはやや日本と似たような感じがするわけである。

2) 中国とアメリカとイギリスで世界を語るのか?
東南は中国の建築トップ校としての自負から彼らの地位を海外のエリート校との連携を作ることで中国内にその権威を誇示している。そこで彼らは学部教育のトップを海外に送り出し帰国後教授にして連携をつくるのである。この戦略は昔の東大と同じである。辰野金吾がイギリスに送り出されたのは戻ってきて教授にするためであった。
そうして送り込まれたのが、AAである。AAのマークカズンズがその人脈でバートレット、MIT、コロンビア、プリンストンから人をかき集めこうしたシンポジウムを企画して、中国内のクラシック4の教授を呼び、彼らの権威をつくるのである。しかしそうしてできた枠組だからそこには世界的な視点があるわけではない。たまたまそうやってできた英語圏の組織であり、それが大国中国と組んで文化的ヘゲモニーを確立しようと言うことにどうもなっているというわけである。まあそれほど意図的で断固たる意図があるわけでもないが、結果的にはそんな風になってしまっている。
僕としては、なんで建築理論を中国語圏と英語圏だけでやる必然性があるんだ?と疑問に思う。そういうわけでおまけのように日本から、インドから、スイスから人が呼ばれているようだが、たった一人ずつである上、僕らはみな建築家であり現代建築ヒストリアンの論客はいない。意図しているのかどうかは知らないけれどもう少したくさんの人をUK US以外から呼ぶべきである。そうしないと彼らは閉塞した建築議論を続けることになると思われる。
し、しかし、何もしないで指をくわえている日本の建築的状況に比べればよほど彼らのやっていることは素晴らしい。見習わねばと反省することしきりである。
彼らに英語圏と中国語圏で閉塞しているというのなら自分の立場もスペイン語圏で閉塞しているのではと反省せねばなるまい。スペイン語、英語、中国語、アラビア語圏の人を一堂に会することができればなと思う。共通語を英語にすればそれも可能である。そんなチャンスを考えてみたい。


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