山岳建築から学ぶ
先日ゲストクリティークに来てくれた多木陽介さんが編訳した本がある。『石造りよのように柔軟な—北イタリア山村地帯の建築技術と生活の戦略』という本である。実は出版された時に編集した鹿島出版会の川尻さんに献本していただいていたのだがきちんと読んではいなかった。
先日多木さんと会ってこのお話を少し聞いて興味が湧き通読した。この本はトリノ工科大学の教授2名の調査に端を発する。グローバル建築が世界を均一に塗りこめてきたことへの批判としてイタリア山岳都市をつぶさに観察し、そこから学ぶことがあるという主張の基礎観察である。この山岳建築の一つのタイプに一階が動物の小屋、二階が人の住まい、三階が干し草置き場という家があり、冬になると寒いので人は動物の小屋で動物の発熱で暖を取って生活をするという話を多木さんがしてくれた。本を見ると確かにそういう写真まで載っていた。現代の日本人が果たしてここまで出来るかどうかは別として、我々が再度こうした建築から学ぶことが多々有ることを教えてくれる良き教科書である。