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批評メディア論

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大澤聡『批評メディア論—戦前期日本の論壇と文壇』岩波書店2015 著者の博士論文の第一部を基礎とした著述だそうだ。博士論文が元になった本は例外なく面白いし充実している。という仮説は今回も覆されず、やはり面白かった。論壇とか文壇とかとはほとんど縁がなく、たまに文藝春秋を読むくらいである。一体論壇とか文壇は何のために、誰のためにあるのかというのがこの本を読んでみたくなったきっかけであるが、なるほどと思わせた。
つまり論壇と呼ばれる、政治経済などおよそ文学以外の論考について批評を加える場が論壇である。文壇は文学作品に対するそれである。そしてさらにそれらの批評を批評する論壇時評、文壇時評が登場する。論壇、文壇の批評の生成理由の一つは、あまり多い著作物をすべて読むわけにいかない読者のための時間節約のためのガイドブックなのである。そして二つ目の理由は多くの著作に価値付けする場として論壇文壇があり、その価値付けを価値づける場として時評が存在する。ということは時評を含めて論壇文壇は悪く言えば価値付けする利権を守るための集団の場と言い換えることもできよう。特に時評を書く人間の権力は本人が意識に関わらず相当なものになるだろう。下手をするそうした場において権利の囲い込みが行われていた可能性は大いにある。特に芸術が関わる文壇においては大いに可能性ありである。
今大騒ぎになっているグラフィックデザインの世界の権利の囲い込みは今に始まったことでもないのかもしれない。
ところでこの本の装丁中野さんなんだ。いかにもという感じです。

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