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ありそうでないこと

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今から10年くらい前にまだナディフが表参道の裏に店を構えていた時に鹿島出版会の人に紹介されて田中巧起さんとお話した記憶がある。徹底して美術史を振り返り、何が行われていないかを考えていると言っていた。その後ダンボールを並べたり、家具を並べたりする作品や、同じ動作が繰り返されるヴィデオ映像などを見ながら、確かに今までに似たようなものがあってもちょっと違うと思った。最近森美術館で流れていたヴィデオ映像は板前さんの調理風景のアップでこれはえも言われぬ魅力があった。人が料理を作るというのはたいして不思議な光景ではないのだが、プロの料理風景はテレビの料理教室くらいのものであまり見たことがない。それをアップで見るというのはありそうで無い光景である。このありそうで無いというところが重要な視点である。この本(『必然的にばらばらなものが生まれてくる』武蔵野美術大学出版局2014)はそんな彼の歴史が綴られている。作品のヴィジュアルがないのだが、言葉で考えている彼の作品はむしろ言葉の方が伝わるのかもしれない。ありそうでない着眼点にぎょっとする。なるほどものにはまだ見えていない面があるのだということを知らされる。

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