ズントーの本
ピーター・ズントー(ツムトア)の文章(『建築を考える』みすず書房2012)を読んでいたら「設計の礎になるのは自分がしてきた建築の経験である」と書いてあって、そういう部分は少なからずあるなと納得する。若い頃はそんなことはないと思っていた。どんなに幼少の頃に貧困な建築環境に育とうと大学教育とそのあとの生活で建築は変わると思ってきたが最近はそりゃそういう人も100人に一人くらいはいるかもしれないが、まあ無理だと思うようになった。槇さんや谷口さんのような建築は彼らのような育ちをしなければできないものである。そう考えるとこの人はこういう幼少期を過ごしてきたのだろうなあと想像出来る建築家はたくさんいるものである。かくいう自分も結局自分の過ごした幼少期のさまざまな体験が建築になっているとしか言いようが無い。それ以上でもそれ以下でもないように思う。もちろんそのつくり方とか表層の部分ではどうであれその真ん中に滲むものはそういうものなのだと思う。
この本のブックデザインシンプルで素敵だと思った。まさにズントーである。彼の幼少期はきっとこういうことだったのだろう。葛西薫のデザインである。